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終わりの合図と見知らぬ唄と
【青春 恋愛小説】

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「小さな記念日と覚えた歌と」-2

黒い瞳はまだこちらを向いている。 夏木サンは相変わらずクスクス笑っている。 青木君は一人しゃべっていた。
「なぁなぁ、今思い付いたんだけどさぁ? 今度の休み、みんなで遊びにいかね?」
「そうね…せっかくお友達になれたんだもの。いいんじゃない?」
「うん、僕も賛成だな。 柳サンは?…どうかな?」

…正直、遊びになんて行った事のない私には重荷でしかないんだけれど…。 それでも心は逆の方向にひっぱられてくのがわかる。
知らなかった友達というものを、藤原君が与えてくれる。 それはとても心地が良くて、永遠とも一瞬とも思える時間だった。 私にもそんな時間を共有する事ができるなら…
「…うん。」
私は微かにうなずきながら答えた。
三人の顔がパッと明るくなる。
その顔を見て私も嬉しくなる。 そっか…これが…友達なんだ…
藤原君と出会ってから急速に変わって行く私…それは全然悪い事じゃなくて。 逆にとても良い事なんだ。 一人の男性が、私の殻を割って行く…
それは、絶望に震えてた昨日にさようならをしても良いと言ってくれてるみたいだった。


「じゃぁ決まりっ!! じゃぁさ、じゃぁさ、詳しい事決まったら連絡するからアドレス教えて?
ついでといっちゃぁなんだけど電話番号も」
…!!
青木君がいきなり切り出した。
「あっ、じゃあ僕も。」
藤原君も加わる。
「私もお願いします。」
夏木サンもケータイを取り出す。
私はというと…
「へっ!? あっ!…うんっ」
初体験ずくしの今日にトドメのアドレス交換… 初めて私のケータイに『友達』って欄ができた瞬間だった。
何週間か前の私に教えてやりたい…
学校って結構いい所だよ。って…


始まりの鐘が鳴ろうとしていた。 陽のもとで話しあった今日と言う日を私は忘れないだろう。
『私に友達ができた日』。
きっと日記を書いてたならとてつもなく長い長編になっただろうな…
荷物を片付けた私達は一緒に階段を降りていった。

少し覚えたあの歌が私のなかでおおきく鳴り響く
『このなんでもない日が記念日になる だから…』
階段を駆け降りる私の足は以前にまして軽くなったみたいだった。


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