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10年越しの約束
【初恋 恋愛小説】

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10年越しの約束-3

「なんか最近の聖、やけにそわそわしてない?春だから?」
クラスメイトの絢音の言葉に、私はハッとした。
「やだなぁ…冬眠明けの熊みたいに言わないでよぉ!」
「熊ってねぇ、アンタ……あれ?もしかして…例の約束の年?」
「あっ、えぇっと…」
(どうしよう…バレちゃってるよ……)
「ふぅん…」
図星を指されて慌てる私に、絢音が意味深な視線を向けている。『絢音は何でもお見通し』といったところだろうか…
(困ったなぁ…)

「で、約束の日っていつなの?まさか今日?」
絢音が顔を近付けながら訊いてくる。どうやら言い逃れは出来ないらしい。
「あ、う、えっとぉ…あ、明日なの……」
「明日ぁ!?」
驚いた絢音が、突然ガタンと大きな音を立てながら立ち上がって、私の顔を覗き込んだ。
「し、し〜っ!ちょっと絢音、声が大きいよっ!」
絢音のあまりの声に、私達はクラス中から注目を浴びてしまっている。
(勘弁してよぉ…)
「あっ、ゴメン。つい…」
絢音は周りをグルッと見渡してから、恥ずかしそうにまた腰を下ろした。

「ねぇ、それって本当なの?」
まだ周りからの注目を浴びてる私達は、聞こえない様に小声で話し始めた。
「本当!明日なんだよねぇ…」
「うわぁ、感動の再会かぁ…ロマンチックだねぇ…『ずっと好きでした』って伝えるの?」
「だから、そんなんじゃないって!それに、10年も前の約束を相手が覚えてるとは限らないし…」
「でも、約束の場所に行くんでしょ?」
「それは…行くけど……」
「なら相手の事、信じてなさいよっ!彼は絶対来る!そうでしょ?」
「う、うん。」
「もぉ、だらしないなぁ…シャキッとなさいシャキッと!」
そう言って絢音は、私の背中をバシッと叩いた。

私だって、全く信じていない訳じゃない。むしろ信じてる。
でも、必ず来てくれると信じてて、もし仮に来てくれないとショックじゃない?
だから私は、必要以上に期待しない様にしている。どんな結果になっても傷付かない様に…
ただそれだけなの。


次の日、私は朝から何度も何度も鏡を見ていた。授業中だって物凄く落ち着かない。
だって今日は、ずっと待ってた約束の日…彼に会えるかと思うと、どうしても心臓が高鳴ってしまう。
早く放課後にならないかな…

キーンコーンカーンコーン…
授業終了のチャイムと共に、私は慌てて鞄を掴んだ。
「ちょっと、聖!気持ちは解るけど、まだホームルーム終わってないよ?」
「ゴメン、絢音…適当に誤魔化しといて!」
「もぉ、仕方ないなぁ…頑張っといで!」
「うんっ!バイバイ!」
私は教室から飛び出した。気が焦ってしまって、ホームルームどころじゃない。
早く約束の場所に行きたいという気持ちが、私を走らせていた。


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