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10年越しの約束
【初恋 恋愛小説】

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10年越しの約束-2

「あはははっ……はぁ…疲れた。ねぇ…名前教えてくれない?」
「は?名前?俺の?」
「うん!だって、お隣さんなのに名前知らないなんて変でしょ?」
「……俺は犬に名前知られてなくても、構わないけど。」
(可愛くないヤツぅ……)
「そんなんだから、友達出来ないのよっ!」
「……コウキだよ。」
「へ?」
「だからコウキだって言ってんだろっ!何回も言わせるなよ、このボケっ!」
(ぼ、ぼけって…嫌なヤツぅ……)


それからというもの、私はよくコウキ君と話をする様になった。
話と言っても、殆んど私が一方的にからかわれてるだけだけど…でも楽しかった。


雪がすっかり溶けて春の気配がやって来たある日、コウキ君が外を指差しながら言った。
「なぁ、ヒジリ…窓の外、見てみろよ!」
「窓の外?」
私は言われるまま外を見る。
(何が有るんだろう……あっ!)
「桜だぁっ!」
窓の外では、病院前の公園に植わってる桜が、ここ数日の暖かい陽気でちらほら咲き始めていた。
「キレー!」
花が好きな私は、窓にへ張りついてその花を眺めた。

「もうすぐ満開だな。」
「うんっ!楽しみだなぁ…」
「なぁ、ヒジリ…」
「ん?」
「退院したら、お花見しよっか!」
(え?お花見?)
「ホント!?約束よ?」
「約束な!」
そう言ったコウキ君は、少し照れた様に微笑んだ。


私が退院したのはそれから2日後…まだあの桜は満開になっていない。
私はコウキ君と離れるのが嫌で、両親にダダをこねてしまった。
「嫌っ!退院なんてしたくないっ!」
「聖は元気になったから、お家に帰れるのよ?」
「でも嫌っ!コウキ君と離れるなんて、絶対嫌っ!」
「でもねぇ、聖……」
困る両親を尻目に、私はわんわんと大声を上げて泣き出してしまった。
我ながら子供っぽいと思う。でも、どうしてもコウキ君と離れたくなかったの…

「オイ、ポチ!」
「な、なによぉ…」
突然のコウキ君の声に、私は泣き顔のまま振り返った。
「約束、覚えてるか?」
「や、約束?」
「そぅ、約束!まさかお前…忘れたのか?退院したら花見しようって約束しただろ?」
「う、うん。」
「俺もすぐに退院してやるから、先に退院してして待ってろよ!」
「本当!?絶対よ?」
「もちろん!」
「ねぇ、いつお花見する?」
「そうだなぁ…じゃぁ、10年後。10年後の今日、あの桜の木の下で会おう!」
「約束ね!」
「約束!」
それから私達は小指を繋いで、指切りしてから別れた。
10年後に再び会えると信じて…


あれから10年…小学生だった私も、もう高校3年生になった。そして、もうすぐ約束の日がやって来る。
私はあの時の約束を、一度だって忘れた事が無い。
コウキ君が覚えててくれる可能性は低いけど、彼も私と同じ気持ちでいると信じたい。


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