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「保健室の小さな秘密」
【教師 官能小説】

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想いの行き着く場所-6

「お金は返したから!」
きびすを返し保健室へ向かう。「ちょ…待って、奏子!」
「名前で呼ばないで。生徒とわかった以上、もう会えないわ」
保健室の引き戸を開ける腕を悠が掴む。
「だから…昨日は悪かったと思ってる。あんな風に誘って…。でも遊びじゃなくてオレはホントに…」
言いかける悠の体を押し戻す。
「お互い忘れましょう。本鈴がなるわよ、早く教室にもどりなさい」
ガラガラッと引き戸を閉める。閉める間際の悠の切なそうな顔が胸を締め付ける。

私はその場に座りこんで唇を噛み締めていた。
「…ぅっひっく」
涙がこぼれ落ちて白衣に染みを作る。
涙で視界が歪む。

そうよ、冗談で誘って来たのはあっちでも、乗って受けたのは私じゃない。

悠は悪くない。悪いのは私だ。
次から次へと涙が頬を伝い落ちていく。
たった一晩一緒に居ただけなのに、こんなにも恋しいと思うなんて。
こんなにも悠の声を聞きたいと思うなんて。
でもその相手は…同じ高校の生徒だったなんて。

悠が私を知ってて黙っていた事よりも、好きかもしれないと思う人を好きになれないことの方が苦しい…。

この行き場のない想いはどうしたら昇華するのだろう。

ポケットに入っていた悠の携帯番号が書かれた紙を、手でクシャッと丸める。
胸が張り裂けそうに苦しい。なんだか息まで詰まりそう。


あれから、悠は誰もいない時に保健室に来ては、ちょっかいを出して帰っていく。
何がしたいのかはわからないけど…。ばらすつもりもないようだし…。

ただ私に出来るのは冷たくあしらうだけ。
もう生徒とわかった以上は、普通に生徒として対応するしかできない。

この胸を締め付けるセツナイ想いの行き着く場所はいつか見つかるんだろうか―――。

保健室の窓からついた溜め息は、秋の夕暮れの空に溶け入る様に吸い込まれていった。


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