ある淫魔のライフスタイル〜堕ちた女魔族ヴァネッサ〜-6
「おそらく機会をうかがっているだけでしょう。油断しないほうが良いですよ。」
「む〜……うっとおしいなぁ……」
ミーティはうんざりだという表情を浮かべている。
「ところでジェイド。今日は講義がある日だよね。」
「え?ええ、そうなんですけどね……」
いつも図書館で本ばかり読んでいるジェイドだが、一応亜種ベル魔法学校の生徒だ。卒業する気はさらさらなく、本当に興味がある講義しかとっていないので講義に出るのは週に1、2回だ。
「でも今はこんな状況ですからね。講義なんかに出てる場合じゃないですよ。」
ミーティが狙われている状況で側を離れるつもりはなく、ジェイドはこの日の講義を休むつもりでいた。しかし……
「いいよ。行って来なさいよ。その講義楽しみにしてるんでしょう?」
「でも……」
「私のことなら大丈夫。もし来ても返り討ちにしてやるわよ。」
「そ、そうですか……?」
少し迷ったものの、結局ジェイドはミーティの言葉に甘えることにした。
「いやぁ〜、勉強になったな。」
講義を終えたジェイドが学校から出てきた。相当良い内容だったらしく、満足そうな顔をしている。
「さて、早くミーティさんのところに行かないと……」
すでに空は暗くなり始めている。もうミーティは家に帰っているはずだ。ジェイドはミーティの家に向かって歩き出したその矢先だった。
「……貴様がジェイドだな。」
狭い路地から姿を現した男が声をかけてきた。男はフードを目深にかぶり、異様な気配を放っている。
(この気配……コイツも魔族か……)
ジェイドも男に向かい、身構える。
「何か用ですか……?」
「少し付き合ってもらうぞ。」
男が手をかざすと周辺の空間が歪み始めた。歪みがジェイドを、そして魔族の男を飲み込んでいく。
しばらくすると歪んだ空間は何事もなかったかのように元に戻っていった。しかし周辺に人の気配はない。家の中にも。静寂の中にジェイドと魔族の男だけだたたずんでいる。
(これは……次元をずらされたな……)
今ジェイドがいるのは元いた世界と平行な位置にある世界。見た目はまったく同じに見えるが、その実まったく別の世界だ。