貴方の妻にしてください2-4
ぷよぷよが消えるたびにゲーム機があげる歓声を友紀は同じようにはしゃいで叫ぶ。
積もって増えてくるとまた「うぎゃー」とか「あわわわ」とか体までバタバタさせて熱中している。
徹は冷静な判断力で難なくこなし、慣れてくるとレベルの高い積み方から消して技を使い出す。
徹の技で一気に積み上げられてしまった友紀は
もうっ!と頬を膨らませている。
「徹さんヒドイっ!もっと手加減して相手してくれてもいいのに」
あまりに本気で不機嫌になる友紀をみて思わず徹の表情がほぐれて笑みを見せた。
「ははは、そんなに怒らなくても・・笑」
「知らないっ」 笑われて余計に悔しそうに睨み返す。
そんな友紀がとてもいとおしく感じた。
徹には女性に対してトラウマがあった。
幼いころから女の子から見ると世話をしたくなるような
母性本能(?)をくすぐる要素があったのか人気があった。
小学生の頃から、何の性の目覚めもない徹に女の子たちは微妙な成熟を見せるようになった。
数人の女子から呼び出され、一人を選ぶように強要されたり
また、あらゆる場面で気持ちの伴わない「性」を無理強いするかのような誘いや刺激を与えられた。
「女」は汚らわしいというトラウマがそんな少年期に生まれた。
しかし、反面憧れの女性像もあった。
風邪で休んだ同級生の男子を見舞った時、同級生の幼い妹が兄を甲斐甲斐しく世話していた。
一人っ子の徹にとって、その同級生の「妹」は可愛くていじらしくて清純なイメージで印象を残した。
少年期を過ぎて、青年になっても清純な少女のイメージと汚らわしい女とのギャップがトラウマとなって恋愛が出来なくなっていた。
可愛い子だと思っても、「女」の表情を見せられると心が醒めてしまうのである。
セックスを割り切れば出来なくもない。
だけど、心から愛する女性とはしたくないと思ってしまう。
セックスは汚れたもののように感じる意識が拭いきれずにいた。
そんな事情がカルテリストに添付されていたのである。
膨れっ面の友紀に少女っぽいあどけなさを感じて少し、気持ちが開放されてきた徹は友紀の頭に手を置いて
「ごめん」といった。
「いいけどね、たかがゲームだし」
「そうじゃなくて、最初に・・・変なことさせて。風邪引いてないといいけど」
「あ・・・あれかぁ」友紀は今度は立場逆転のチャンスを捕らえたように目を光らせて、それでも恥ずかしそうに目を伏せた。
「キレイだったよ・・・あ、名前何だっけ?」
「友紀」
「由紀さおりの由紀?」
「古いなぁ〜〜!」思わず年齢差10年を感じた友紀は
「岡崎友紀の 友紀よ」と答えたが
「それも、古いよ!」と徹に言われて、そういえばそうだと吹き出した。
つられて徹も声をだして笑ってしまった。
「面白い人だね。明るいし」
「ありがとう♪でも、自分の妻を改めて褒めるなんて照れない?」
そういって微笑むと突然ブルっと震えた。
「大変だ。寒い?やっぱ、風邪をひかせたかな」
心配そうに友紀を見つめると引き寄せて抱きしめた。