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『しま模様と紙ひこーき』
【青春 恋愛小説】

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『しま模様と紙ひこーき』-4

「……って、一次関数!?」
飛び上がりそうになった。が、なんとか押さえ、その代わり私を留めていてくれた机がガタガタと震える。隣の子はビックリしたらしく、こっちを不思議な目で見ていたが、私は疑問を解消する為すぐさま聞く。
「もしかして…一年生?」
「そうですが」
と、女の子−後輩の子に、何を今更、と見られてしまった。確かに階段を
上がっていたときは考え事をしていたから、ここが何階ってことを気にしないでいたみたいだ。今思うと、ここは二階で一年生の教室がある階だった。
「てっきり、先輩かと思った」 「…なんでです?」
「や、口調とか佇まいとか」
「…おばさん臭いってことですか…」
私の言葉に頬を膨らまして言う。そこが小動物みたいでかわいかった。ああ、年下なんだなって実感した。女の子はよほどくやしかったったのか、対抗する。
「先輩の方が子供臭いです」
「あ、先輩ってわかるんだ。先輩オーラ出てる?」
「いえ、全然です」
「………」
暫く見つめ合う。そして、
−−ぷ。
二人同時でふき出した。静かな教室に笑え声が響く。廊下にも伝わったらしく向こうで木霊しているみたいだ。きっと職員室や見回りの生徒にも聞こえてしまう。だけど、そんなことは関係なかった。彼女が初めて笑ったから。やっと、この教室に蟠っていたものが消えた感じがした。だけど−。
「あははは−…はは…う、うわわああぁああわん」
笑いが乾いたものに変わって、何故かいつの間にか泣き声が響いた。
もちろん私からではない。今日初めて出あった、目の前の小さな女の子からだった。
私は呆然とした。目の前の女の子が泣きじゃくっているのに呆気にとられて思考が回転しない。え、え?私なにかした?
それでも彼女は泣いていた。まるで小さな子供のように。そして私は、情けなくオロオロとしていた。
その時、泣き声に掻き消される位の小さな音がした。
その音がだんだん近づいてくるのがわかる。どうやら見回りの先生か生徒の足音らしい。私はそう理解した瞬間、行動に移していた。
私は泣き止みそうにない女の子の手を引っぱって、後ろの掃除道具箱の中に隠れた。
掃除道具箱の中はやっぱり狭く、当たり前だがほうきやちりとりやらで混雑していた。
だけどそんなことはおかまいなしに足元に置かれていたバケツを足で蹴り出し強引に収納されてやった。
−カランカラン。とバケツの悲鳴が止んだ頃、少し遅れ足音が留まり、生活委員の男の子の怒鳴り声が聞こえた。
「おい、もう下校時間過ぎてんぞ!」
見回りの人から隠れるなんてなんか泥棒みたいでドキドキする。
「ん〜ん〜」
のは、私だけみたいで、むりやり押し込んだ彼女はうねっていた。
彼女が泣き止まなかったため、押さえている口からは暖かい息が漏れる。私の手をくすぐった。そして人差し指には冷たい感触があって。たく、なに泣いてるんだか…。
「あれ?さっき物音…ま、いっか。たく、メンドーな委員選んじまったな」
どうやら、委員の子は元々やる気がなかったらしい。数秒もしないうちに居ないとわかると文句を吐きながら立ち去っていった。足音が沈黙した廊下を踏みしめる音を耳に聞き、泣き声が止んでいることに気付いた。
「……」
恐る恐る視線を下げる。そこには修羅顔負けに上目遣いで睨む女の子。私はとっさに手を離し、危なかったね、と苦笑いをすると、
「…もう、大丈夫です。お見苦しいとこを見せました…」
私から顔を逸らし、目の前の掃除道具箱のドアを見つめた。
その彼女の口調はさっき笑ったのはともかく、その前よりも沈んでいた。もしかして怒っているのだろうか。なら謝った方が…。


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