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『しま模様と紙ひこーき』
【青春 恋愛小説】

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『しま模様と紙ひこーき』-3

教室の中に入った私は、彼女の隣に腰をかけ、
「なんで、紙ヒコーキなんか?」
やっぱり敬語は使わなかった。別にこの子は気にしていなさそうだったし、彼女もきっとやり易いだろうと思ったからだ。それに、彼女は私よりも頭一個分背が小さい。だから、なんだか敬語はしっくりこないっていうのも理由の一つだ。まあ、先輩だったとしても、謝れば大丈夫だろう。
「直球ですね」
「だって、下校時間まであと五分もない」
私が壁に掛けられた時計を確認すると針は四時五十五分を指していた。
廊下には何かが出そうなぐらい静かで、よくこうゆう時にコツコツ響く足音が近付いてくるのをホラー映画で見たことがあるが、何も音がしないと言うのもそれはそれで不気味だ。
「大丈夫です。実際は、教室の見回りや、窓の鍵などの点検で最低十分はかかります」
私は、当たり前に話す彼女に少し感心してしまった。
彼女の容姿からは知的と思わされたが、実際も利口な子なんだろう。そんな正反対の、私にしてみたら彼女のような冷静さがなんだか大人みたいで正直羨ましい。
だけどそこまで詳しく知っているってことは、何回も残ったことがあるんだろうか。この子も委員会の仕事をサボって…。私はどこか親近感を覚えた。
「ただ、何となくです…」
ポツリと。まただ。
私は、さっき覚えた親近感を否定されたことよりも、また見せた表情が気になった。いや、実際は彼女が外を見ていたため、顔は見えていなかった。ただ、口調がそう感じさせた。
「で、紙ヒコーキは?」 私は彼女の机の上に散乱してある紙ヒコーキを手に取る。
しま模様と少し黒ずんだ、見たことある形のヒコーキ。二等辺三角形の面に直角三角形をひっつけたようなスタンダードな誰もが一度は作った事のある奴だ。
その他に生産されていたのはスタンダードな形の羽の部分が直角に折ってあるような、いわゆる男子人気なカッコイイ戦闘機みたいなものや、台形のような羽をしているもの。その中に見たこともないヒコーキもあった。
その時ふと違和感がした。
そのどのヒコーキにも汚れのようなものがあった。ノートの行線とは違う濃さの不規則な黒の線。
「あ…」
そこであることに気が付いた私は持っている紙ヒコーキを開いた。
ヒコーキが元のノートの一枚−一枚を真ん中に切られた半分−になった時それは見えてきて、やっぱりそれはノートだった。「日常で使われている」。の、だ。
「これ…」
その、この子の性格がわかる−綺麗で丁寧に綴られた字とわかりやすくまとめられた要点やグラフの−ノートを見て言葉を無くした。代わりに不謹慎なことを脳裏に浮かべてしまう。
「(イジメ…?)」
しかし、それは違っていたらしく私の考えが顔に出ていたのか、彼女は「違います」と淡々と口にした。
確かに…。イジメならノートが読めないようにマジックで塗りたくるとか、破るとかするだろう。なら、彼女はただいらないノートを処分するためにヒコーキの材料にしているだけだろうか。
だけど、普通なら使い切ったノートって取っておくものじゃないかな。
私は一切自分ではしない事を思いながら、もう一度折り目がついたノートの切れ端を見る。
すると意外な発見があった。ノートに書かれているのは数学の授業内容で、そこには一次関数の練習問題とちゃんと定規を使って引かれている直線のグラフが書かれていた。しかも全問せいかい… 数学の苦手な私には少し羨ましい…。


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