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『しま模様と紙ひこーき』
【青春 恋愛小説】

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『しま模様と紙ひこーき』-1

始めは悪戯な秋風に踊らされているビニール袋だと思った。ビニール袋じゃなくてもごみか、とりあえずここの掃除当番の反感を買うものだろうな…と。
私は委員会の仕事がやっと終わり、帰路につくためにグランドに出たとき視界の隅に現れたのをふと見つけ思った。
ソレは夜の帳の準備期間に照らされる西日をちかちかと反射し、その茜色の照明を受けてなのか、夕方の舞台の上で舞う姿は幻想的で少し寂しく感じさせられた。
夕暮れ時というのはどうしてこうも人の心を鎮めさせるのだろうか?…なんて哲学的なことを言ってみるものの、私には酷く(自分的にはいいと思うけど)不釣り合いな台詞だなとビニール袋から視線をはずした。
再び帰路についた私の後ろからは、ゆるやかな音楽が鳴り響いている。下校十五分から流れ出した下校を知らせるミュージックだ。それに加え、「みなさん下校時間が迫っています…」と、我が校生活委員のお勤めをがんばっている生徒の声が音楽に合わせるようにスピーカーから聞こえている。「早く帰ってください」という所がやけに力強い感じがしたが。
そんな下校時間最終まで残らなければいけないかわいそうな委員の必死な呼びかけのお陰か、グランドには指で数える程度の生徒しかいないみたいだった。まあ、現時刻が下校十分をきったからだろうけど、さすがにこんなギリギリまで残っている子はそういない。いるとすれば、わたしのように先週あった、一斉委員会で与えられた仕事を私情で延ばしにのばし、気付いたら明日に〆切りが迫っていた−−という、間抜けな生徒だけだ。
「わたしだけじゃないよ…」
そう呟いたその時、ふと、いや「つー」といったほうが適当だろう。何かが私を追い越し、
「え?」
空中で華麗にUターンして−
私の足元に舞い降りた。 それは、さっき空に浮いていたビニール袋!ではなく、一機の紙ヒコーキだった。
そのとき私はビックリしたんだと思う。多分目の前に鏡があったら、食事中のシマウマが微かな殺気に気付いたときの目を見開いたみたいな顔をしていたに違いない。
「(それにしてもなんで、こんなのが…)」
私は顔を元に戻し反射的に足元の紙ヒコーキを拾い、何気なく見てみる。
少し汚いけど普通のヒコーキだった。いや、紙ヒコーキに変も普通もあるわけじゃないが、よく男子が休み時間に朝の会でもらったプリントで作ったソレと同じ、よく見るものだった。だけど、これはそんなクラスの男子が作るのと少し違っていた。
このヒコーキはノートで作られているみたいだった。正しくいうと「ノート一枚」で、だ。
そんな、少し汚れた所々と、しま模様が引かれたちょとおしゃれな紙ヒコーキを持っていると、無性に飛ばしてみたくなるのは私がまだ子供だからなのかな?
確かに中学二年生で身長も前から指で数える程度は子供だと思うけど、少なくともクラスの男子よりかははるかにお姉さんだ。
「けど、お姉さんもたまには子供に戻りたいときもあるよね」と、まだブラジャーもつけるのに当分かかりそうな、青臭い子供がいうとまさてるだけと思われる事を言い、つーっと放った。
紙ヒコーキを飛ばすなんて久しぶり。といっても小学生低学年のときはクラスのレクリエーションでよくやった覚えがある。それでも五年ぶりくらいだ。
だからだろうか?こんな些細な事で少しドキドキしている私がいるのは。
そんな、これも夕方が醸し出す魅惑の雰囲気からか、湿っぽい事を考えいるうちに紙ヒコーキは操縦がきかなくなった飛行機みたいにヘロヘロと墜落した。
そのとき後ろから声がして振り返った。
「早く帰れー!!」
「………」
辺りがさらにシーンとなった気がした。ついに、今まで耐えていたらしい委員の子がキレたらしい。だけど、私は「ごめんね。もう少し」と、手を合わせ、帰路につく生徒とは別の方向に進んだ。


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