記憶のきみ8-3
その日の夜、父親はお母さんに謝り、お母さんは父親を許した。
父親が働いて稼がないと、ろくに生活もできなかったからだ。
別れることもできず、きっと苦渋の判断だったのだろう。
そしてこの日から、家族三人で笑い合うことはなくなった。
ボーっと記憶をたどっていると、父親からケータイに着信が入った。
「………はぁ」
この男は……何度かけてきたって、電話をとることはないのに。
やがて留守番電話の録音が入る。
「………父さんだけど、今夜は仕事で遅くなると母さんに伝えておいてくれないか。よろしく」
ブツッという音が終了を知らせる。
「………うちと話したいからって……もう、なんなのよ」
ケータイをベッドに放った。
そして、この出来事から六人の物語は急展開を迎えることになる。