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恋におちて
【教師 官能小説】

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恋におちて-2-2

「加奈!」
廊下を歩いてた私が振り向くと、そこにいたのは同じクラスの岡部亮太。
一年から同じクラスで、入学してすぐ裕子と意気投合。私も裕子と一緒にいて、亮太の明るくて人懐っこい性格のおかげですぐに仲良くなった。
「ちょっと来い」と言われて誰もいない所まで連れて行かれると、こっちを向いてズボンのポケットから一つの鍵を出した。
「それがなに?」
「これな、屋上の鍵。前に部活で使った時返すの忘れて持って帰っちゃったんだ。で、チャンスだと思って合い鍵作ったんだ」
亮太はそう言って煙草を吸う仕草をしてみせた。確かに屋上は普段誰も入れないようになってるから見つからないかも。
「身体に悪いからやめなって言ってるじゃん」
「そうじゃなくて!屋上の一番端っこ行くと見えるんだよ、非常階段!」
私は呼吸をするのも忘れて亮太を見つめる。
「誰にも言ってないし、言うつもりもない。他に誰かが屋上使った形跡もないから安心しろよ」
身体は固まったまま、やっと声をしぼり出して「ごめん」しか言えなかった。亮太のいつになく真剣な表情に、なんだか悪いことをして怒られてるような気分だったから。
「謝る事ないけど」
黙ってる私に亮太は続ける。
「三木って、26だっけ」
「今年27」
「10上か。加奈、遊ばれるなよ」
亮太はいつもの優しい笑顔で言った。
「今度ゆっくり話聞かせてよ。相談のるからさ」
亮太はそう言って階段を降りていった。

私はいっそ誰かに知られたかった。一人で抱えてると、私一人で現実ではないところにいるような気がしてきて。
だから少しホッとしてた。


今日は裕子の部活動が休みだから一緒に帰っていた。
裕子は、私が昼休みにたびたびいなくなったりする事を、気にとめてる様子はない。彼女のあまり気にしない性格と、私たちのあまりべたべたしない関係からか。
経験豊富で姐御肌な彼女は的確なアドバイスをくれそうで、つい相談したくなるけど、そこはぐっと我慢。時が来たらきっと話す。裕子、ごめん。
「あっ見て!あれ!」
駅に向かう道で、裕子が急に前を歩く女子生徒を指差す。
裕子が「あれ」と呼んだのは、同じ学年の…確か隣のクラスの…えっと名前が出てこない。でも背が低くてかわいい人。
「アイツ三木に付きまとってるんだよ。本気で好きなのかな?他の女が三木としゃべってると睨むらしいよ!こわいよね〜」
どきっとした。
楽しそうに裕子は言うけど、私は何も言えず、その子を見た。
「…あんなかわいい女の子に告白されたら、男は嬉しいだろうな」
口から出たのは、驚くほど卑屈な言葉。
「そうかもねぇ」
そう言って裕子はまた歩き出した。


次の日の休み時間、突然亮太が深刻な顔して、私に言った。
「加奈、三木が怪我したらしいよ」
急な事でびっくりして何も言えない私に、亮太は続けた。
「B組の三木ファン知ってる?ちっこい子。」
何も言わずに頷く。たぶん昨日見たあの子だ。
「アイツとその友達が階段でふざけて三木にちょっかい出してたら、アイツがつまずいて、それを三木がかばって落ちちゃったらしいよ」
「……」
「あっでも捻挫ですんだらしいよ」
頭が真っ白になっている私に、亮太は慌てて言う。
思ったより軽傷で少しホッとしたけど、先生に会って確かめたい。
「保健室で休んでるんだけど、アイツが様子見に行ってるみたい。今お前が行ったら不自然だから、放課後まで待ったほうがいいんじゃない?」
「わかった。ありがとう、亮太」

捻挫ですんだとはいえ痛いのは痛いだろうし、やっぱりすごく心配で、授業なんて頭に入らなかった。
休み時間も、あの子が先生に会いに行ってると思うだけで苦しくて、いても立ってもいられなかった。
早く先生の顔が見たい。声が聞きたい。


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