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エス
【純愛 恋愛小説】

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アイ(1)-2

「これも知ってるー。有名だよね」

指差してけたけた笑いながら次のページをめくった。
そこには、みんなが知ってる、けれど、本当かどうか分からない、一番、知りたい噂が載っていた。

「あっ……」

目に飛び込んできた二文字に目が釘付けになる。ミクが短く声をあげた。

「エス……」


三人の声が重なった。
もう何ヶ月も前からどこの学校の生徒も噂してる。
エスという不思議な人物の話。
表向きは興味本位で、でも、裏はみんな何を考えているのかわからない。
本当は何を占ってもらいたいのか。

記事にはエスがよく出現するらしいポイントが載っていた。
マックの辺り、109の辺り。

他にも、何箇所か。


昼休みの終了を知らせるチャイムが鳴る。その音にはっとして、私達は机を元に戻した。
その間何も話さなかったけれど、三人とも同じ事を思っていた。

「エスを探しに行ってみたい」

って。



放課後はあっという間にやってくる、というのはユウの持論。
ただし、彼女は授業の半分以上を夢の中で過ごすのだけれど。

「んー……」

HRも終わってみんなが帰宅に向かうなか、私とミクはユウの机の周りに集まった。
ユウは伸びをして気持ちよさそうに声を漏らす。

「ほんっとに良く寝るよね」

ミクがユウのショートカットの頭を撫でる。夕日に反射してミルクティー色に脱色した髪がきらきらと光る。

「で、いくでしょ?」

ミクが鞄の中の雑誌を取り出した。
私とユウはにやりと笑って頷いた。

渋谷はいつ来てもごみごみしてて、本当に空気も悪いし、人も多い。
それでもこの街には魅力的なのだ。
だからこそエスはこの街にいるのかも知れないし、この街で何かから隠れているのかもしれない。

「とりあえず、どこ、いく?」

ミクが雑誌のあのページを広げて私達に見せる。
ユウが近いところを指差して、三人で歩き始めた。



「ここもいないねー」

ミクとユウが店の中をどんどん入り込んでいく。
だから、二人の後を私は追うので精一杯だった。

「郁、ここもいないよー」

ミクが私を振り返って首を振った。
ユウはすでに興味が移ったのか、陳列してあるTシャツを手にとって見てる。


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