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エス
【純愛 恋愛小説】

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アイ(1)-4

「うん、そう。多分、正解」

エスはそう言って自分が座っている折り畳み式のパイプ椅子の後ろからコンビニの袋を取った。

「随分ずっと寝てるから冷えちゃったかもしれないけど」

こつん、こつん、と中から二本の缶を取り出す。
それから立ち上がり入り口と思われるドアの側まで行くとスイッチを入れた。
部屋は一瞬にして明るくなり、私はようやくエスの姿を隅々まで見ることが出来た。
それからさっき置かれた二本の缶を見る。

「どっちがいい?ミルクティーとレモンティー」

エスは噂になるほど凄い人物とは思えないほど普通で、椅子に歩いて戻って私に笑った。

「じゃ……あ、レモン」

口を開いてそう言って初めて気づく。物凄く喉が渇いていたと。

「……ふふっ。知ってた」

そう言ってエスはミルクティーを逆さにした。
ミルクティーの缶のプルタブは既に開いていて、中身は一滴も出てこなかった。

私はきっとすごく驚いていたと思う。
エスはそんな私の顔も、そんな風に驚く顔も、見慣れているんだろう。
レモンティーを持って私の側まで来るとそっと差し出して、私の手に握らせた。

「大丈夫。殺したり出来ないから」

サングラスの奥の瞳が笑う。
渡されたレモンティーの中身は確かに入っていて、プルタブはきちんと缶にくっついたままだった。
手の中のレモンティーをじっと見つめて、その後エスを見る。

「どうしてレモンティーって分かったのかって顔、してる」

コンビニの袋からポテトチップスを開けると机に置く。そして私に手招きをした。
仕方なく私は立ち上がり制服を直してからエスの元へ行き、向かい合わせに腰を下ろした。

「あのねー……、占いだとか、色んな噂立ってるけど、違うの」

コンソメ風味のポテトチップスをエスがばくばく食べながらそう言う。私も遠慮がちにそれを一つまみ頂いて口にした。

「見えるんだ。過去と、未来が。きっと全部じゃないだろうと、信じたいけれど」

エスはそれをまるで枝毛があるよと教えてくれるかの如く、さらりと言ってのけた。

「未来、と、過去……?見える?」

模試より難しい問題を出されたように頭がこんがらがる。
エスは嬉しそうに頷いた。

「そう、見えるの。今日貴方と会うのも見えたから、だから、こうして会えたのかもしれないね」

「自分の過去も見えるの?未来も?死ぬ、時間も?」

思わず私がそう尋ねるとエスは困ったように笑った。

「さぁ、どうかなぁ。見たいと思わないから、見ないだけかもしれないし、見れないのかもしれないし」

「……私の、未来も見えるの?過去も?」

ふっとエスの顔が真剣になる。そして頷いて、サングラスに手をかけた。

「それを望むなら出会えた記念に見てあげるよ。何が知りたいの?」


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