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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-93

「これがまた、なかなかナイスなボディラインをお持ちでしてね」
「ナイスなボディライン……」
 雄太の脳裏に、凹凸がはっきりとしたグラマラスな女性の影が浮かんだ。
「むっ」
 鼻の下が伸びた恋人の様子にすぐに気づいた品子は、その足を思い切り踏みつける。当然、ぐりぐりも忘れない。
「い、いってー!! ぐあっ……」
 とびあがった瞬間、膝頭を机の裏板にぶつけてしまい、雄太は二重の苦しみを味わうことになった。
「明日、部室に顔を出されることになっています。監督の件も引継ぎをしましたし、部室の鍵もお渡ししてありますが、いつも屋久杉君たちが集まっている時間帯をお伝えしてあるので、誰かひとりはいてくれるとありがたいところですね」
「あ、はい。そうします」
 痛みに悶絶している主将の代りに、岡崎が苫渕に応えた。彼のサポートはさりげなく、そして、的確である。
「それでは、お願いします」
「ありがとうございます、苫渕先生」
「いやいや。今年こそは、あなたたちが美味しいお酒を飲めることを、異国の地で祈っていますよ」
「ガ、ガンバリマス!」
 悶絶から少しだけ回復した雄太が、苫渕に気合を示した。そんな彼の様子を、亡くなって久しい我が子を見るような温かい眼差しを注ぎながら何度も頷くと、苫渕は部室を後にした。



 しばらく後、桜子と大和がその部室の前に来た。存在を既に知っていた桜子に導かれて、大和はつき従うように彼女の後ろを歩いている。

 ごんっ!

「あいたぁ!!」
 勇んで足を進めていた桜子だったが、軟式野球部の部室となっている小屋の手前でひさしの出っ張りに額をぶつけていた。身長が180センチを越えていないと、とても当たりそうにない高さにあるその場所に“額”をぶつけてしまうのだから、今更ながら桜子の長身には驚かされる大和であった。
「ううぅ〜。痛い……」
「だ、大丈夫?」
 額を抑えて悶絶している桜子に、大和は何ができるというわけでもないが、その顔を覗き込む。よほどに痛かったのか、その瞳が潤んでいた。
「なんだ、どうした?」
 がら、と立て付けの悪いドアを無理やりスライドさせて、中から人が出てきた。陣羽織に鉢巻姿の屋久杉雄太である。
「おう、桜子じゃねえか!」
 部室に響いた衝撃音を訝しく思っていた彼の顔は、桜子の長身を確認するなり喜色に満ちたものになった。
「桜子ちゃん」
 雄太の声に反応し、次いで品子が顔を出す。岡崎も、二人に倣うようにして部室を出てきた。
「せ、先輩、こんにちは……」
「オッス! ……んで、そこの出っ張りにぶつけたのか?」
「そうですぅ」
「ははっ、ウチの若狭もよくやるんだ」
 双葉大軟式野球部の中で、一番の長身であるチームメイトが犯す失態を、早速桜子がやらかしてしまったことに雄太は可笑しくなった。
「桜子ならやるんじゃねえかと思っちゃいたが……見事にやっちまったな」
 抑えきれずに、雄太は吹き出してしまう。
「笑うなんて、ひどい!」
 痛い思いをしたというのに。
「いや、すまねえ」
 そんな非難を受けたから、というわけではないが、不意に雄太は表情を引き締めると、昨年から待ちかねていた桜子を歓迎するために右手を差し出した。


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