『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-47
「はぁ〜……よかったぁ……」
動悸が収まらない胸を抱えながら、黒電話を押し付けたまま固まって、深い呼吸をする桜子。つい先だって、顔なじみの先輩から、“今度、ウチの大学、入れ替え戦をやるんだ。勝てば、晴れて隼リーグの1部入りだぜ!”と言われたとき、桜子はその応援に行くことを告げ、そして、大和にも声をかけようと思った。
渡りに船だった。野球のことなら、彼を誘う理由としてはまたとないものだから。
ただ、昨日の今日というインターバルのなさが、桜子に躊躇いを覚えさせた。何度か受話器の前をうろうろした彼女は、しかし、意を決して、大和にもらった連絡先に電話をかけた。昨夜、あれだけ大和のことを脳裏に描き、自己の情痴に乱れ狂ったこともあったから、ダイアルを廻す指が震えて仕方なかった。
「♪」
だから、快い返事を得られて桜子は小躍りしたいほど嬉しかった。押さえようとしても、両頬がにんまりと緩んでしまう。
(何かが、始まりそう―――)
そんな予感を交えた心の昂揚に、桜子の笑顔が眩い光を生み出していた…。