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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-46

「電話よ。……女の子から」
「?」
「とても礼儀正しい子だったわ。あんたもよくよく、そういう子に縁があるねぇ」
「母さん」
「あら失言。ごめんなさい」
「………」
 かつて一度だけ、息子が関係を持っていた一学年上の女性のことは、和恵も知っている。そして、この二人の関係が、その少女の卒業と同時に終焉したことも…。
 大和は少し、困った顔つきをしたまま受話器を受け取る。
「ハイ、大和です」
『あ、草薙大和君? あたし、蓬莱です』
「蓬莱さん?」
 大和は、昨日の試合を思い出す。そして、彼女に手渡した電話番号のことも。
『ご、ごめんね、昨日の今日で……』
「そんなことないよ。うん」
 確かに随分と短いインターバルでお声がかかったものだと思うが、実はそれが嬉しいことを、彼の表情は隠せていない。
(あらあら)
 そして、彼の母親である和恵は、大和の表情を見逃しはしなかった。
『明後日の祝日なんだけど……あたしの知ってる先輩の大学が、野球の試合をするの。それで、よかったら、草薙君も見に行かないかな、と思って……』
「蓬莱さんの、先輩?」
 確か桜子は、女子高だったはず。だとしたら、女性で野球をしていることになるが…。桜子から説明を受けて、その“先輩”が男であることを知った。ほんの少し、複雑な気持ちが胸に湧いた大和であったが、桜子の説明によれば、この先輩は彼女同伴でよく蓬莱亭に顔を出すらしいと聞いて、安堵した。
 相当の野球好きのようで、龍介ともすっかり顔なじみになった“先輩”とその“彼女”は、桜子とも親交が深くなったそうだ。なんと、むしろその“彼女”の方が、野球にはものすごく詳しいという。
『その人、前に原田さんが言ってた“隼リーグ”に参加してる大学で野球をしてるの。その大学は2部にいるんだけど、今度入れ替え戦の試合に出るっていうから、あたし、応援に行こうかなって思って……』
 それで、大和にも声をかけてみたのだという。
(隼リーグ……)
 大和の興味は、その返答をすぐに導き出した。
「いいね。行くよ」
『ほんと!? ありがとう!!』
 受話器越しに浮かぶ桜子の笑顔は、はっきりと大和の脳裏に形を作った。その明るさは距離が離れているにも関わらず、大和の心に暖かさを生む。
「どうしようか?」
『その試合、城央市営球場でやるの。9時に試合始まるから、現地に8時半でどうかな?』
「そうだね。じゃあ、そういうことで」
『うん! それじゃあね、バイバイ』
「うん」
 がちゃり、と受話器が置かれ、耳慣れた音が後に続く。桜子の陰のない言葉づかいが耳に響いて、それが消えると大和は、得もいわれぬ寂しさが込み上げてきた。
「デートの約束? 受験生なのに、余裕あるじゃない」
「そ、そんなんじゃないけど」
「でも、たまには息抜きも必要か」
「母さん」
 この人は、食らいつくとしつこい。
「ふふっ。昨日から、大和、いい顔になってる」
「えっ」
 確かに、それまで抱えていた陰鬱なものは、日曜日に野球の試合に参加して、桜子を中心にした人の輪に触れたことで、さっぱりと消えた気がする。
「電話の子に、お礼を言わないとね。昨日も、同じ子から誘われたんでしょ? とっても、いい子そうじゃない」
「……そうだね」
 桜子の明るさによって救われた自分がいることを、大和は自覚しているし、大きな感謝の気持ちを抱いている。だから、彼女とのつながりを保っていたくて、自分の電話番号を教えたのだ。まさか昨日の今日でいきなり連絡が入るとは思わなかったが、それは相手も自分との連なりを快く思っていることの証だと、大和は思っていたかった。
(何かが、始まりそうだな―――)
 大和は、肘を壊してからずっと停滞していた自分の運気が、何かプラスの廻りにようやく乗ることができたような、心の晴れる思いを抱いていた。


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