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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-260

 その後、キャッチャーとしての基本的な構え方から、イレギュラーバウンド時におけるミットの動かし方、状況に応じたコースの投げ分け方といった技術的な指導を亮から受け、“本日の仕上げ”と言うことで、再び投球練習を行うことになった。
「ナイスボール!」
 今までのようにただ捕るだけではなく、投げ込まれてくる大和のボールをしっかりと受け止めるように気を配る桜子。それは、ほんのわずかな心境の変化だ。
(なんだろう。とても、投げやすくなった気がする)
 しかし、そこから生じた違いは大きい。
 ボールを投げ込む先にいる桜子の雰囲気に、とても大きく深い包容力を大和は感じた。だから、気持ちよく投球を続けることができた。
「THAT’OK! 今日はこれで、FINISHにいたしましょう」
「Sir!」
 グラウンドでは、フリー打撃が予定の打者一巡を越えて続けられていたが、時間とタイミングを見てエレナがその終了を告げた。
「なかなか、頑張ったわねぇ」
「くぅ……」
 最後の打者は、雄太であった。彼は、最初の打席でもあっさりと凡退を喫してしまい、“泣きのもう一勝負”を晶に申し込んでいたのである。
 ちなみに岡崎は、当たり損ないとはいえ三遊間をしぶとく抜く安打を放っていた。その結果の差も、雄太を刺激していたのだろう。
 最後の一振りは、いい当たりではあったが二塁手の正面を突くライナーであった。しかし、わずかな球数で仕留められたこれまでの打席とは違い、十球以上をファウルで粘った点は、評価しても良い。本人は、満足していないだろうが。
「栄輔、ご苦労様」
「おぅよ……」
 ぐったりとしているのは、神経を集中させて晶のボールを受けていた栄輔である。
「あんたも、成長したわよねぇ。昔は、“レベル2”になると、真ん中でも捕れなかったのにね」
「ま、まぁな」
 とりあえず後ろに逸らすことはなかったが、何度か顔面でボールを受けた栄輔は、その度ごとに、目の前に星を散らせながら汲々としていた。
「さすがに、しんどかったな……」
「ぶっ続けで、試合をしたようなもんだからなぁ」
 練習試合をこなし、そのまま間をおかずにフリー打撃に移っただけに、若狭や栄村を始め、双葉大のメンバーたちは疲労の色が濃い。特にフリー打撃では、エレナの言うところの“SPIRITS”を振り絞って晶と対戦していたから、尚更であろう。
「それじゃあ、明日はOFFですから。ゆっくり、休んでくださいね」
 もっとも、試合のあった翌日は練習がオフになっているので、充分にそれを癒す時間は設けられていた。
「それでは、監督、失礼します」
「Yes,see you!」
 各自ストレッチとマッサージを行い、クールダウンと着替えを済ませ、帰路につく。
「それじゃあ二人とも。後で、蓬莱亭で」
「ハイです」
「おうよ」
「じゃあねぇ」
 亮も晶を伴い、エレナと栄輔に一声かけてからグラウンドを後にした。
「大和君、今日はバイトの日?」
 着替えは原則、女子が先である。大和が部室から出てくるのを待っていた桜子は、バッグを抱えて外に出てきた彼を早速捕まえる。
「今日は、休みだよ」
 試合のある時はそれに集中したいので、ローテーションを考慮してもらっていた。もっとも、9月に入った時点で客足は普段の様子に戻っており、大和の出番はこれまでの週に四回から、二回に半減していた。
 ちなみに、“夏休みの間だけ”という話だったのだが、風祭や満のたっての願いで、その後もアルバイトを続けることになっていた。店長である風祭が、自身のオフ日にしている水曜と、なにかと人手が欲しい土曜に、これからの大和はシフトが入っている。野球部の練習や試合と重なる場合は、それを優先してくれという好意も貰っていた。


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