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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-261

「桜子さんは?」
「あたしも今日は、お休み」
 一方、桜子も、“蓬莱亭”でのヘルプは減少傾向にあった。さらに今日は、夕方からイベント(同窓会のような夕食会)もあるので、店は貸し切り状態になる。ゆえに、桜子も今日は“お手伝い日”ではないのである。
 二人はともに、午後からの時間は空いていると言うことがわかった。
(そういえば)
 ふと、大和は思う。この夏の間は、野球の練習でよく顔を合わせてはいたが、彼女と何処かに出かけたことはあったろうかと…。
 いくら互いに無類の野球好きとはいっても、そればかりの思い出に夏を彩るというのは、忍びない気もする。
(バイト代も、入ったから)
 先立つものは、充分にある。金銭が目的でバイトを始めたわけではないので、それを使う予定を持っていなかった大和にとって、十万という金額はかなり大きなものだ。
(さっきの、罪滅ぼしもしないと…)
 亮にコーチを受けていた時、彼の口から出た“甲子園の恋人”というかつての二つ名。それの出所が桜子からではないかと疑い、つい責めるような視線を投げてしまった。誤解と知り、己の過失を認めて謝ったとはいえ、彼女に嫌な思いをさせたのは間違いない。
「どこか、遊びに行こうか」
「あ、うん!」
 誘いをかけた瞬間、桜子の顔が輝いた。自分の申し出に、心から喜んでくれていることが、よくわかる。考えてみれば、自分に今日これから時間があるかどうか話を振ってきたのは、“何処かいこうよ!”と暗に伝えたかったからなのだろう。
「♪」
 これから、大和と一緒に出かけることになって、軽やかなメロディが聞こえてきそうなほど桜子は御機嫌な様子である。というより、実際に鼻歌が聞こえてくる。
(考えすぎなのは、僕の方なんだろうな)
 忍びないとか、罪滅ぼしとか…。それは余計なことだ。恋人同士の時間を過ごすことに、理由は何も要らないはずだ。桜子が喜んでくれるなら、それだけでいい。
「何処にしようかな……」
 それはそれとして、いざ考えてみると行く場所に迷う大和であった。市内の繁華街に繰り出すことにはなるのだろうが、選択肢の幅がどうしても狭い。なにしろ、“市内”と考えた彼の頭に真っ先に浮かんだのは、城央市営球場だったというのだから…。
「おねだりしてもいい?」
「?」
「映画なんて、どうかな」
 遠慮がちに桜子が言い出してきた。野球をしている時とは違う、そのしおらしい仕草がとても愛らしい。
「見たいなーって、思ってた映画があるの」
「そうなんだ。じゃあ、それを見に行こうよ」
「いいの?」
「もちろん」
 むしろ、場所に迷っていた大和にとってはありがたい。ただ、誘いの声をかけながら、行先で迷ったと言うのはなんとも甲斐性のない話ではある。そこは、反省が必要だと大和は思った。そう考えることからして、彼も生真面目が過ぎると言えようか。
 とにもかくにも、久方ぶりの桜子との“デート”は、まずは映画の鑑賞ということに決まったのであった。


「シャワー先にもらっちゃうけど、いい?」
「ああ」
「ありがとね」
 練習試合を終えた亮と晶は、“蓬莱亭”で始まる夜の会食を前に、帰宅して準備を整えることにした。
 バスルームの使用権を先に渡した亮は、濡らしたタオルで簡単に体を拭いておいた。後で改めて禊を済ますつもりだが、とりあえずさっぱりしておきたかった。
 汗と土に汚れたユニフォームを洗濯籠の中に放り込み、ブリーフ一丁の姿となった亮は、晶がバスルームの住人になっているのをいいことに、そのままキッチンに足を運ぶと、冷蔵庫に常備しているスポーツドリンクを一缶取り出して、一気に呷る。


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