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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-217

 スクイズの警戒を頭の中から外したバッテリーは、二球目に内角のストレートを持ってきた。それだけでなく、雄太は、プレートの端に足をかけ、晶に対峙する角度が少しでも厳しくなるように意図してみた。
 球威をいきなりつけるのは難しいが、工夫次第でストレートの力を増すことは出来る。相手に対して角度をつけることは、そのひとつである。そうすれば、球の出所が見極め難くなり、投じられた球の軌道がわかりづらくなる。
「ファウル!!」
 その分、スイングも鈍ってしまうのである。
「あれぇ!?」
 内角のストレートを読んでいながら、雄太が角度をつけたことに気付かなかった晶は、打ち損じたような鈍い当たりのファウルに、悔しさと戸惑いを顕わにしていた。
(いいぞ。二人とも、負けてない)
 バッテリーは、相手を凌ぐ気迫で晶と対峙している。大和の目に見える勝負の趨勢は、今のところ互角以上だ。

 ギン!

「や、やばっ……!」
 晶がドロップを打ち損じたことで、この打席における勝敗の行方を示す針は、バッテリーに向かってはっきりと振られた。
 大きく曲がり、外側に沈んでいく軌跡を追いきれなかった晶のバットは、ボールの上っ面を叩いてしまい、打球は大和の真正面にゴロとなって転がった。“しまった”と言わんばかりに泡を食った晶の表情が、大和にはとても印象的だった。
 転がってきた打球。それを確実にグラブで掴まえ、素早い動きで右手に持ち替えてから、機敏な動きで素早くセカンドの吉川に送球する。
「アウト!!」
 胸元のしっかりした位置にその球を受けた吉川は、一塁走者である航君のスライディングをかわしながら一塁へ送球した。ステップをつける余裕がなかったため、吉川の送球は高く浮いたが、チームで桜子と並ぶ長身の若狭は、ベースを足につけたまま腕を伸ばし、余裕を持ってそれをファーストミットに収めていた。
「アウト!!! チェンジ!」
 この場面で描くとすれば、これ以上ないほどの理想的な絵が仕上がった。一死一、三塁の大ピンチを、ダブルプレーによって見事に乗り切ったのである。
「OK! GOOD JOB!!」
 
 ぱちぱちぱちぱち…

 ピンチを防いだ喜びは大きく、ベンチのエレナが高速回転でその手を叩き鳴らすのも当然だった。
 先制を許すタイムリーを喫した相手である晶を、今度は併殺打に仕留めた。これは、とても大きい。攻守の勢いを考えたとき、相手に向かっていた流れを止めるばかりか、こちらに引き戻す契機にもなり得るからだ。
 圧倒的な点差で敗れていながら、それを跳ね返して勝利を勝ち取る例はいくらでもある。それを見ても、野球はその試合の中で、いくつも流れの転換点があるということである。大和はそれを何度も経験してきた。
「ナイスリードだよ、桜子さん」
 だから、満塁策を取らずに晶との勝負を選んだ桜子を、彼は誉めていた。顔を紅くして、嬉しそうにはにかんだ彼女の笑顔は、とても眩いものであった。


 とにもかくにも、試合は進んでいる。

 キン! 

「!」
 3打席目が廻ってきた亮は、これまでの慎重な選球から一転して、初球のストレートを思い切り引っ張った。三塁ライン際を襲う、強烈なライナーが飛ぶ。

バシッ!!

「アウト!」
 しかし、“火の出るような”低い弾道の当たりに対して、その反射神経をフルに稼動させた大和が飛びつき、伸ばしたグラブの中にそれを掴まえていた。


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