『STRIKE!!』(全9話)-54
一方、こちらは亮の部屋である。
「ん……」
晶の唇は、コトが終わった後でも亮を離さない。名残りを惜しむように、深く、長く、亮を捕まえている。
「………」
さすがにそれが数分にも及んだので、亮はその頬に手をそえ、そっと顔を離した。
「けち……」
不満を隠さない晶。彼女にはまだ、触れ合いが足らないらしい。お互い既に、3回も頂点を極めたというのに。
「ねぇ……もっと……ね?」
今日の晶は性に対して貪欲だ。今の長いキスも、果てた後の後戯と思わせながら、実は相手を次のラウンドに誘っているのかもしれない。
(む、むむ……)
だが、限界は亮のほうだった。使ったスキンの残骸に、順を追うごとに薄くなっていく己の欲望が露骨に見えて、晶を愛してあげたい想いも裏腹に、これ以上の体力の消耗はさすがに御免こうむりたかった。
「あ、晶……わるいけど……」
何度も膨れ上がったが故に、イチモツが少し痛い。それは亮に突かれ続けた晶とて同じはずなのだが、分泌される保護液の質の違いなのか、まだまだ彼女には耐久力が存分に残っていそうだった。
「もう、ギブアップ?」
残念そうで、哀しそうな晶。少しだけ影をおとしたその表情に、思わず胸が鳴る。
その高鳴りは、ある部分にも伝わった。
「げ……」
「あは、まだいけるじゃない」
むくむくと存在を主張しだした愚息の節操のなさを、今だけは本気で怨みたかった。
「ね……しよ……最後にするから……だって、また明日から、亮に触ってもらえなくなっちゃう………」
そういって、再び亮の腰にまたがり、その先端に向けて真っ赤に熟れた秘部を押し付ける。それはもう、抵抗などは露もなく晶の中に入っていき、たまらないぐらいの充足感が心身ともに晶を満たした。
「あ、あぅ……りょ、りょうっ!」
ぐっちゃ! ぐちゃ、ぐちゃ、ぐちゃ!!
「あ、晶……たのむ……もっと、優しく……」
普通は逆だろう、亮君。
「あ、あう……くっ、くぅぅん!……あふ、あふ!」
ぐっちゃ、ぐっちゃ、ぐっちゃ!
と、激しく腰を打ち付ける晶。その動き、今までの中で一番苛烈だ。故に堪らず、本気で助けを請うように悶える亮だが。
「あ、ああ……いい……すっごく、いいのぉ!!」
既に快楽の虜になっている晶の耳には、届くはずもなかった。
「あ〜あ、これでヤリおさめかぁ……」
「玲子さん」
下品です。その言葉は、直樹が、後の沈黙に含んだものである。
「直樹くんも、感化されやすいわよね。木戸くんに倣って、試合前はしないっていうんだもの………。でもね」
くすり、と微笑むと不意をついて直樹の唇を奪い、
「………今日、とっても凄かった」
悪戯っぽく、そう言った。
「………」
直樹としては、言葉がない。
亮が、試合3日前は、晶と性的接触をしないようにしているというのは随分前に玲子から聞いた話だ。キャプテンとしての矜持が、彼を刺激したのか、直樹もまたそれを慣習にしようと考えた。
それで今晩は、その実践が始まる直前の逢瀬だったわけだが、それを意識してしまったのか思いのほか乱れてしまって、改めて指摘されると、なんとも気恥ずかしいものがあった。
「……3日後ね」
玲子が、少しだけ真剣な顔つきで言う。その出所は、直樹もこのごろ強く意識しているものだった。
「ほんとうのスタートライン。去年みたいには、なりたくないよね」
「当然」
最下位を独走し、主力のほとんどが抜けてしまった昨季。その轍を踏まないためにも、3日後の試合は大きな意味を持つ。
隼リーグの開幕試合。相手は、昨季総合優勝の強敵・櫻陽大学。新年度を迎え、チームもある程度は様変わりしたであろうが、常にトップクラスの成績を維持する大学だけに、今年も優勝候補の筆頭に挙げられる。
かたや、城南第二大学は、入れ替え戦を勝ち、なんとか1部リーグに残留したチームだ。