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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-202

「まずは、サードだけど……」
 練習を開始し、シート打撃に映った頃、亮は皆を集めて守備位置の確認をした。空いている三塁を埋めることが、まずは第一の課題と考えてのことだ。
「エレナ、頼む」
「ME!?」
 思いがけない指名にエレナが目を点にしている。
「俺たちの中で、一番野球センスに優れているのはエレナだ。肩も強いから、送球も心配ない。……内野の守備経験は?」
「ファーストが少々……」
 珍しくエレナの声が小さい。急に空きポジションをまかされて、多少なりとも動揺しているのかもしれない。
 だが亮は、内野守備に関して素人ではないということを聞き、自分の判断に更なる自信を持った。
「なら大丈夫。いけるさ」
「BUT」
「おもしれえじゃねえか、エレナ」
 長見が手を掲げ、その肩に手を乗せる。身長差があるから、傍から見るとどうしても、その肩にぶら下がろうとしている子供の構図になってしまう。
「エイスケ……」
「エレナのサードっての、見てみたいぜ」
「……YES」
 長見の言葉が契機となったか、しばらくの逡巡の後、エレナは大きく頷いた。
 …と、いうわけで、まずはエレナのサードとしての守備力を測ろうと、シート打撃のように皆が守備位置に散った状態で、彼女にノックをすることにした。もちろん、ノッカーは亮である。
「エレナ、行くぞ」
 まずは正面にゴロを打つ。エレナはそれをしっかりと正面で受け取り、軽やかなステップを刻むと、ボールを一塁手へ向かって投じた。
「わっ!」
 それを待つ原田が、跳んだ。はるか上方に、送球の球が反れたからだ。
「………」
 エレナに次ぐ長身の彼は、なんとか後ろに反らさずそれを捕球したが、いわゆる“悪送球”であることは誰の目にも明らかだった。
「OH……」
「次、いくぞ!」
 いきなりのミスに呆とするエレナの様子も気にかけず、亮がゴロを放つ。エレナは慌てたように正気に戻ると、やはり正面でそのゴロをグラブに掴み、ステップを合わせて送球した。
「お……」
 パシッ、と小気味のいい音を残して、エレナの送球はしっかりと原田のファーストミットに収まった。
「いい感じだ!」
「ほっ……」
 エレナが安心したように胸をなでおろしている。
「どんどん行くぞ!」
 そんな彼女に余裕を与えないように、亮は矢継ぎ早にノックを繰り返した。始めは正面に弱めのゴロを打ち、じょじょに打球の速さを強め、左右に打ち分けていく。
「のわっ!」
 捕球に関して、エレナは全く問題なくそれをさばいたが、数球に何度か、ファーストへの送球が大きく反れた。
 サードは内野で最も一塁から遠い。故に、地肩の強さとしっかりしたコントロールが要求されるところなのだが、前者は充分に要項を満たしているエレナも、距離感を掴むための経験が不足している後者に関しては、さすがに乱れた。
「むつかしいです……」
 何度となく、原田の構えるミットを大きく外して暴投したエレナがため息をつく。正面に来たゴロについては、あまり体勢も崩れないから悪送球はあまりないが、左右に打ち分けられたゴロを捕球したときは、やや崩した体勢から送球へのステップに移らなければならないために、送球に大きな乱れが生じている。
「充分だ。動きは、とてもいい」
 しかし亮は、思った以上の成果に満足していた。
 まず彼女は打球を怖がらない。それに、ボールに対する反射神経も優れたものがある。フットワークも、直樹や斉木ほどではないが、内野を任せるには充分な柔軟さを持っていた。唯一、難のある乱れがちな送球も、これからの練習で経験を重ねれば落ち着きを見せるだろう。


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