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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-201

「松平はんは、そっから消えた」
「………」
「それがまさか、今ごろになって、しかも、あんなことを……」
 赤木は無念そうに唸る。彼もまた、松平の凶行を信じられない思いで受け止めている人物なのだから。
 だが、切り替えの早さはこの男の長所である。
「幸い、キャプテンの怪我も命にはなんも関わらん代物やったし、二人も思ったより元気やったからな。木戸の気持ちも、当然わかるが、それよりも、ワイらには考えなあかんことがあるやろ?」
 既に現実に目を向けている赤木は、なおも事件に対して激している亮を諭す。
「でも! でもですよ!!」
「まあ、落ち着け……」
「そんな、赤木さん……!」
「………」
「なんでそんなに落ち着いていられるんですか、赤木さん!」
「いい加減にせえ!」
「……っ」
 なおも冷めない亮に対して、赤木の激しい声が飛んだ。赤木にしては珍しい怒声に、グラウンドに揃っていた皆は目を点にして彼を見る。
「ワイらの目標はなんや? お前が目指してるものは一体なんや!? 言うてみい!!」
「……次の試合で勝って、リーグ戦に優勝すること……です」
 亮もやはり、その赤木の迫力に驚いていた。だからこそ、彼の言葉がすんなりと耳の中に入ってきて、亮は問われるままに答えを返した。
 口に出した言葉は、それが意味を持って意識に沁みこんでくる。亮は、胸に渦巻いていたいろいろな錯綜が整理され、そこにある現実に目を向けるだけの余裕をやっと見つけた。
「赤木さん、ありがとうございます……」
「落ち着いたか?」
「はい……すみませんでした……」
 少し、我を忘れた自分を恥じているのか、赤木に怒鳴られたことを気にしているのか、亮が肩を落とす。晶はいつにない彼の消沈ぶりに、傍で見ながら心が穏やかではなかった。
「よっしゃ、さすがは木戸や。悪かったな、怒鳴ってもうて」
 それを見透かしたかのように、赤木は笑顔で亮の両肩に手を乗せる。
「キャプテンがワイに言うたことを、おまえに託すで」
「え?」
「空いたポジションを、おまえが考えて埋めるんや」
「………」
「キャプテンが今度の試合に出るんわ不可能や。だから、3番と三塁手がおらん。木戸、おまえがその代役を誰に任せるか決めるんや」
「お、俺が?」
「先輩を差し置いて……なんぞ言わせんぞ。ワイらは、おまえの決定には絶対に従うつもりや」
 なあ、と、原田、新村、長谷川、上島を見て言う赤木。皆はそれに深く頷いている。
「赤木さん……」
「肩書きではワイが副キャプテンやが、事実上はおまえがそれや。自分でも情けないとは思うところやが、キャプテンも監督もおらん今、野球のことで頼れるのは木戸だけや」
「……わかりました」
 今度は迷いなく、意を決したように亮は頷いた。この瞬間、彼はその双肩に、城二大の命運を背負ったことになる。
「よっしゃ、ほな、今日も元気にいこか!!」
 赤木はそんな亮に満足したように頷くと、いつもの軽妙さで練習の開始を告げた。とりあえず、副キャプテンの彼は号令に関しては、自らが率先してチームの先頭に立った。
 さすがにその部分まで亮に頼るわけにはいかないと、赤木はことさら張り切って大声を出していた。野球の技術に対して確かに赤木は他の面々に大きく劣るところはあるが、そのリーダーシップは瞠目すべきところがある。
 だからこそ、不測の事態によって直樹が抜けてしまった今の状況にあっても、城二大の軟式野球部はいつもと変らぬ練習を行えるだけの精神状態を保つことができたのだ。
 それは紛れもなく、赤木の大きな功績である。





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