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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-203

「決まりだ。サードはエレナで行く」
 本人に覚悟を促すように、メンバーにその決定事項を声高に伝える。“応!”と、皆は声を揃えたので、エレナも決意したようにその表情を引き締めていた。
「それじゃ、入るぜ」
 エレナのノックを、一番心配して見ていた長見が打席に入る。野球部の練習は、そのままシート打撃に移行した。
 長見から打撃練習が行われ、2番の斉木と打順に従ってそれぞれ打席に入る。
 当然、直樹がいないので3番は空席になっていた。
「………」
 亮はこの空白も埋めなければならない。
 リーグを代表する高出塁率を誇る直樹だ。その穴は、サードの守備位置よりも、とてつもなく大きいものに思えた。

「よっしゃ、今日の練習はしまいや」
 その後、守備位置別に念入りなノックを施してから、この日の練習は終わった。波乱含みで始まったというには滞りも何もなく、スムーズにこなせた気がする。
 直樹や亮の陰に隠れてはいたが、赤木の先導力はなかなかのものだ。あの“勢い”が、皆に伝播して、それが気合をくれるのだろうか。
 ノックのときは、ぼろぼろとボールをこぼしたが、彼は最後まで必死にそれを追いかけ捕まえる。打撃も空振りがほとんどだが、すべてがフルスイングだ。
 彼は何事にも懸命だった。それは、間違いのないことであり、だからこそ皆を引っ張るだけの器量が備わっているのだ。たとえ実力が伴わなくとも…。
「赤木って、意外に頼りになるよなぁ」
 上島の言葉である。その言葉に原田は、まるで自分のことのように嬉しそうに相槌を打っていた。



「……やっぱり、エレナを上げるしかないかな」
 練習が終了し、着替えを済ませた亮は晶を待ちながら、最後の試合となる櫻陽大学戦のスターティングオーダーを考えている。3番打者を決める参考に、いろいろデータを物色したかったのだが、玲子は直樹に付き添っているから、研究室には入ることができず、従って端末も使えない。
 しかし、打順を組替えるのに考えられるのは、エレナを3番にあげて、6番を打っていた原田を5番に据えること以外に思いつかなかった。確実性にやや欠けるところはあるが、4本のアーチをかけている原田の長打力は充分にクリーンアップを打つ力はある。
(だけど……)
 その原田を遥かに上回るエレナの長打力は、ランナーが堪った状態であればあるほど大きな力を発揮するものだ。故に、その比類なき長打力が、ポイントゲッターからチャンスメーカーの立場に廻ることは、あまりチームにとってプラスになるとは言いがたいところもあるにはあった。
(………)
 かといって、打率のあまり高くない原田を3番に据えるのは、なおさら得策ではない。いっそのこと、足の速さを生かし、それなりに率を残せるようになった長見を3番に置こうかとも考えたが、やはり彼の持ち味は1番でなければ発揮できないだろう。
「……亮」
 残された懸案である3番について思考をめぐらしていたので、着替えた晶が戻ってきたことに、すぐには気づかなかった。
「ああ、晶……ん?」
 名前を呼ばれ、彼女の姿を確認したとき、閃いた。
「な、なに?」
 不意に見つめられて、晶は照れる。それこそ頭のてっぺんから足のつま先まで見られているので、服を着ているというのに晶は丸裸にされている気がして、体が熱くなってきた。
「ああ、そうか! 考えることなんてなかった!」
「りょ、亮!?」
 が、と肩をつかまれた。そのまま抱きしめられてしまいそうな勢いだ。


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