『STRIKE!!』(全9話)-17
「アンタの頼み、受けるよ」
「あ、ありがとう!」
亮の、掛け値なしの笑顔に、少しだけ悪戯心が浮かんだ。
「でもね、あたし、高いよ?」
「え、え、え?」
“荒”の二つ名を持つ、晶の姿が俄かに湧き出て、亮は一瞬、不安を感じた。
「あの、あの……?」
「冗談よ。もう、あんなこと、しないわ……」
その言葉に、安堵する。
「でもね」
不意に、晶の両手が亮の後頭部を捕らえた。自然、顔同士が向き合う形となる。頬を朱に染めた小柄なつくりの晶の顔が、とても可愛い。
「別の形で、もらっていいかな……?」
そして、ゆっくりと近づいてきた晶の顔。その瞳が、閉じられる。
「………」
唇が重なり合う。お互いの吐息が、本当に触れている距離で、繋がっている。
「………」
当然ながら、亮にとっては初めてのキスだ。
「………」
味わったことのない、表現の仕様がない柔らかさ。その部分から伝わってくる晶の想いが嬉しくて、それでいて恥ずかしくて、とても、暖かくて。
亮にとって、とてつもなく大きな意味を持つ時間だった。
唇が離れたとき、上気した頬のまま、晶は言う。
「本番は、勝ったときに、もらうからね―――――――」
「ほ、本番って……ム……」
そしてもう一度、柔らかい感触が唇に生まれた。