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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-18

第2話 「初 陣!!」



「あ、あああ! も、もっと、モット突き上げてぇ!!」
 粘り気のある水音をひびかせ、獣の生殖行動のように激しく腰を打ち付けあう男女。柔らかい女の部分を、彼女が望むように荒々しく、固い己の象徴で攻める。
「あ、あひぃぃぃぃぃぃ――――――!!!」
 相当奥深くまで貫かれたのだろう。背中をそらせ、頤(おとがい)をそらせ、女はもだえる。

 ぐちゃ、ぐちゃ、ぐちゃ…

 と、粘膜同士が分泌する互いの淫液が弾けあい、これまた淫靡な旋律を奏でていた。
「あう! あひっ、あひっ! ふ、ううぅぅぅ!!!」
 男の股間にまたがる女は、突き上げられながらも自ら腰を振りたくり、より快楽の高みへと己を導く。その姿、普段の清楚な雰囲気を微塵も感じさせない。ボブカットの髪を振り乱し、汗を飛び散らせ、はしたなく乱れるその姿はまさに……雌。
「ひうぅ! う、うく! あ、あああああああ!!!!」
 男がその柔腰をひっつかみ、さらに激しい腰使いで女を悦ばせる。おそらく、近づいた自分の限界を、押しとどめることなく開放しようというのだろう。そして、その波に女を浚い、ともに頂を極めようと獣になりきっているのだ。
「い、イク! イっちゃうの!! もう、イク!!!」
 男が望んでいた言葉を女が漏らしたとき、彼は耐え忍んでいた欲望を全てその胎内へと注ぎ込んだ。
「あ、ああああああ――――――――――――――!!!!!!」
 その熱量の高さに、女もまた、生殖を忘れた行為の最終到達点へ、三段抜きでたどり着いた。



「木戸が?」
 激しい行為の後、濃密な残り香の中で、二人はまどろんでいた。そんな折、玲子が発した言葉に、直樹は夢想の世界から現実へと引き戻された。
 玲子は、先日、新入部員を連れてきた木戸の様子を、この年下の恋人に話して聞かせる。熱い情交を終えたふたりは今、同じチームの監督とキャプテンという関係に戻っていた。
「可愛い、女の子だったけど」
「なぬ?」
 あの朴念仁が、ナンパを? 直樹は、朴訥とした木戸が軽口をたたいて女子を口説こうとしている姿を空想しようとする。
 …しかし、無理だった。どう考えても、ナンパするより先にその女の子とキャッチボールを始めてしまっている、自チームのキャッチャーを思い浮かべてしまう。
 玲子が困惑しきりの直樹を助けるために、話を続けた。
「知ってる? 『甲子園の風』」
「ああ、藤堂智子。俺も読んだことあるよ」
「あれのモデルさん」
「えぇ!?」
 野球に関わっているものならば、3年前の甲子園で起こった出来事について、何かしら覚えがあるというものだ。そして、その出来事をモチーフに、若手小説家・藤堂智子が、『甲子園の風』という短編小説として、甲子園関連の雑誌に掲載したことで、ある種の伝説にまで昇華した趣もある。
「一回生の米倉ゼミに、近藤って子がいたけど、その子」
「近藤……近藤晶か!」
 名前を聞いて、直樹は間違いないと思った。なにしろその現場を、球場のバックネット裏の席で見ていたのだから。
 さらに、そのときの大会の注目を一身に浴びていたその左腕投手に、直樹は県予選で敗れていたのだから、縁の深さは果てしない。もっとも直樹はそのとき、怪我のためにベンチに入れなかったから、直接対戦したことは無かった。
「野球からは、もう離れてたって……」
 同じ県内にいながら、以降はその名を聞くこともなかった。だから、そう思っていた。
「木戸君が口説き落としたみたい」
「あの、朴念仁が?」
「野球で語らせたら、木戸君は立派なプレイボーイだもの」
「な、なるほど」
 確かにそうかもしれない。
「でも、これで来週の試合はなんとかなりそうね」
 何の相談もなく、突然消えた主力の松平の穴が、これでポジション的には埋まったことになる。野球において投手の存在は、かなり大きい。
「今日の練習から、参加するって。あともうひとり、一回生が入ってくるわ」
「そいつも、何かいわくつき?」
「ううん。モデルさんの追っかけみたいなものかしら」
 くすくすと無邪気に笑う仕草は、年上とはいえ可愛い仕草だと、直樹は思った。


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