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ヴァンパイアプリンス
【ファンタジー 官能小説】

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ヴァンパイアプリンス7-2

「大丈夫。今日は自転車持ってきたから。」
「ほぇ?」
月下の泣き声がピタッとおさまる様子に、また宏樹は笑みをこぼす。
「な…んで?」
「ん?月下がなかなか来ないから寝坊かと思ってね、歩いたら絶対遅刻じゃん?だから。」
宏樹は自転車にまたがり、乗りなっと合図を出した。
「…う〜」
「あぁι泣かないのιほら、行くよ。」
宏樹は月下の腕を自分のお腹に絡ませる。
「しっかり掴まって。結構スピード出すから。」
「う…わぁぁ----!!!!!」
宏樹は全速力で自転車をこぎ始めた。
ここから学校まで普通に歩いて30分。必死で走って20分。自転車で15分。
「…後ろに彼女を乗せて11分!!」

冬の自転車登校は、実に清々しい。冷えた空気を出来る限り吸い込むと、月下の肺の中は『冬』で一杯になった。
「気持ちいい〜♪」
月下は自転車のわずかな隙間に器用に足をかけて、立ち上がる。
「わッ、月下危ないよ!!」
「大丈夫!!気持ちいいね〜」
吐く息が外気に触れると、真っ白な気体となって消えていく。どこか趣のある情景だ。
月下は宏樹の肩をしっかりと掴んだ。
肩の布越しに感じる宏樹の体温。月下の胸にトクンッと温かいものが流れる。
「宏樹〜」
「ん〜?」
声を大きめに出して、月下は宏樹を呼んだ。
「あのね…ありがとう。」
「うん」
宏樹は少し息があがっているようで、空気中にはひっきりなしに、白くなった息が流れる。
月下はその光景を見て、また胸がトクンッと高鳴るのを感じた。
「宏樹…」
今度は囁くように宏樹を呼ぶ。
「ん〜?」
どんなに小さな声で呼んでも、宏樹は決して月下の声を聞き逃したりはしない。
「…大好き…」
月下は小さい声でそっと呟いた。
「え?もう一回言って?」
「きッ…聞こえなかったらいいの!!」
月下は急に恥ずかしくなった。
(今の聞こえてたら恥ずかしいわ…)
月下は宏樹に聞こえなくてよかったと思ったのだが、
「…俺もだよ。」
宏樹はクスクス笑いながら答えた。
「…へ?」
その瞬間、月下は一瞬にして顔が真っ赤になった。
「きッ聞こえてるじゃない!!」
「え-?な-に-?」
宏樹は聞こえないふりをする。
「バカぁぁ〜!!」
月下はまた少し泣いた。笑

ー…
「ナイス!!ジャスト11分!!」
宏樹はハァハァ息を荒くしながら、携帯のタイマーを止める。
「ほら!!月下!!間に合った!!」
宏樹は嬉しそうに笑った。
「うん」
月下は、たまに見せる宏樹のガキっぽい表情に胸を熱くする。
「本当にありがとね。寝坊してごめん。せっかく宏樹が起こしてくれたのに…」
「あ〜いいよ。」
宏樹はさほど気にしていないようで、自転車を駐輪場に置いた。
「さ、行こう。」
宏樹は月下に手を差し出す。そして、『せっかく間に合ったのにここでチャイム鳴ったら切ないでしょ-?』と苦笑した。
「確かに…」
月下は宏樹の手を取る。
「ひゃっ!!」


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