投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

紅館の花達
【ファンタジー 官能小説】

紅館の花達の最初へ 紅館の花達 30 紅館の花達 32 紅館の花達の最後へ

紅館〜白い騎士〜-3

三ヶ月後。
『ハイネルシス、よく頑張ったね。』
私は今、この獣人の館にいる。ここは紅館と言われる館。
この獣人はハンバートの大公爵、ウェザ=リスタンス=ウィズフライト公。
私はこの三ヶ月間、戦いの毎日だった。相手は強力な魔族。
獣人が姫を救う方法として提示した事が、魔族退治だった。
この国では、人間同士の戦争は無いがまだ魔族が人を襲うことが絶えない。
それらの魔族を退治し、国に貢献し、そして貢献で姫の罪を軽くするのだった。
大逆罪を犯した本人は流石に減刑を許されないが、連座の者ならそれが可能だ。
だが、それでも大逆罪だ。私はこの三ヶ月で多くの魔族を倒し、かなりの功績を上げたが、辛うじてお妃様と姫様の死刑が終身刑となった程度だった。
『あとは大丈夫、あとは私が少しづつやる。 安心して休みなよ。』
そう紅様はベットの横で話す。
私は最後の魔族との戦いで深い傷を負ったのだ。
右腕は千切れかけ、左目を失った…
今は黒い眼帯でそれを隠している。
『…お頼みします…』
紅様は金髪のエルフに私を頼むと部屋を出ていった。
(…右腕の感覚が無いな…)
千切れてはいないが、恐らく治っても剣を持って戦うことは出来ないだろう…
もう、あとは紅様に頼るしか方法は無いのだ…
『傷、痛む?』
エルフが声をかけてきた。
姫と同じ長い金髪、美しい人だった。
『…いや、大丈夫…です。』
エルフは、名をアルネと名乗った。
紅様の秘書だそうだが、医療の心得があるようで、この傷を治療したのも彼女だ。
『アルネ…殿、私の傷が治ったら、館で働かせて貰えないだろうか…?
給料はいらない…紅様に恩返しをしなければ…』
恥を忍んで紅様にすがったのだ、少しでも恩返しがしたかった。
『あら、ちょうど良いわ♪
今馬飼いが歳で引退したから空いてるのよ。それで良いかしら?』
無論、私はそれを受けた。

傷が完全に治るまで、三ヶ月かかった。
だが、今は包帯も全て取れ、右腕も支障なく動く。
(…凄い医療技術だな…)
最悪、腕が曲がらないだろうと覚悟していたが…
コンコン…
ノックの音の後に紅様が部屋に入ってきた。
『やぁ、ハイネルシス。
傷はもう良いようだね。』
包帯が取れた腕を凝視される。
『相変わらずアルネは腕が良いなぁ…』

確かに、治療の時のアルネの手つきはかなり熟練していた。本人曰く、長生きしてるから覚えちゃった♪だそうだが、才能があるのだろう。
『さて、君の仕事場に案内しよう。』
紅様は手招きしながら部屋を出ていく。
馬小屋は私が居た黒竜館の裏手だった。ちょっと古めな木の小屋に8頭の馬が繋がれている。
『おもな作業はわかる?』
『はい、知っております。』
王宮でも馬の世話が仕事に入っていたので良く知っていた。
紅様は、ではよろしく頼むと言うと行ってしまった。
『……』
馬達に近付き、撫でてみる。馬は私の手が気持よかったようで、嬉しそうに鳴いた。
(馬は良い…私を人間と勘違いしているのか知らないが、怖がらない…)
王宮では…姫は優しかったがやはり自分は人間では無い魔の種族、姫以外の人はどうも私とは距離を取っていたようだ。
(…人でない私…紅様は認めてくださった。)
戦闘における強さ以外必要とされていなかった自分を馬飼いとして置いてくれたことがハイネルシスは何より嬉しかった。
(さて、では働くか。 先ずは飼い葉をやらなければ…)
飼い葉を取りに行こうかと思い、小屋の入り口を見ると動きが止まった。
『………』
『………』
少女が、獣人の少女が一人、柱の陰に隠れながらこちらを見ていた。
『………』
『………』
青い猫の耳と尻尾、そしてつぶらな青い目が私の白い目を見つめる。
(………ど、どうすれば良いのだろう…?)
ここは挨拶すべきなのか?そうなのだろうか?それとも気付かないフリ?いや、もう目があってるし…
そうこう考えていると、少女がいきなりニマー♪と嬉しそうに笑顔になり、私は逆に驚いた。
『…ゼロゼロ良い人み〜つけた♪』
はぁ…?言葉の意味が解らず、首を傾げるが少女は何故か満足したようで、青い尻尾をフリフリと振りながら嬉しそうに走り去っていった…
(…………何なのだ………?)


紅館の花達の最初へ 紅館の花達 30 紅館の花達 32 紅館の花達の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前