Cross Destiny
〜神竜の牙〜A-7
5年後
ロイドはこれまで各地を放浪しながら自分の直感に従い剣を打ち、名剣を残してきた。
そしてロイド達はリィズ王国の小さな町の宿屋にいた。ロイドは深刻そうな顔でレーヴェスとヴェイルに話をした。
「レーヴェス ヴェイル 俺はもう歳だ。
だからこの町で剣を作り、それを最後に引退する。」
「本当に引退するのか!?」
「マジかよ!?」
二人は驚愕した。今までまったく衰えを感じさせなかったロイドが引退宣言をしたからだ。
「そこでだ、最後の作品は最高の作品にしてえ。だから俺が言うものをどっちかに調達してきてほしいんだ」
「調達してきてほしいもの?」
ヴェイルは尋ねた。
「ああ、このリィズからしか取れないオリハルコンという鉱石だ。今まではミスリルに少しオリハルコンを混ぜてただけだったが今度は100%オリハルコンの武器を作りてえ!!」
「ひゃ、100%!?」
レーヴェスが信じられないといった表情で答えた。
それもそのはず、武器の素材の大半をしめるミスリルと違いオリハルコンはほんの僅かしか取れない。値段も数gでも恐ろしい値段になるからだ。そしてオリハルコンは化工するのが大変難しく、100%オリハルコンで武器を作るなど考えられないことだったのだ。
「そ・こ・で・だ」
ロイドがヴェイルを見ながらニヤッとした。
そしてヴェイルは嫌な予感がした。
「ヴェイル、お前が調達してくるのだ!それも10?な」
ロイドはヴェイルに人差し指をさしながら言った。
「くるのだ!じゃねえよ!!10?も取れるわきゃねえだろ!!」
「大丈夫だ。一日300グラム取れば一ヶ月で帰ってこれるだろ?」
「簡単にいうなー!!」
「ゴホッゴホッ、こんな老人の細やかな夢は叶わないのか。ゴホッゴホッ」
ロイドは具合が悪そうなふりをして言った。
「だー、わかったわかった。そのかわりとんでもない期間かかるかもしれないぞ!!」
「ああ、いくらかかってもいい。頼んだぞヴェイル!!レーヴェスは俺の準備の手伝いをしてくれ」
「わかった。」
それからヴェイルはオリハルコンを発掘することができるという山に向かった。
しかしそれから三ヶ月経ってもヴェイルは帰ってこなかった。
「やっぱり俺も一緒についていったほうがよかったな」
レーヴェスはつぶやく。
「いや大丈夫だ。あの男は出来ないことを引き受けたりしない、やると言ったらやる男だ。」
「ああ、そうだな」
「それにお前には準備も手伝ってもらったし、俺も一人だと寂しいだろ?」
寂しい。レーヴェスは例え冗談だとしてもロイドの口から寂しいという言葉を聞いたのは初めてだった。
この時レーヴェスは少し妙な胸騒ぎを感じていた。