Cross Destiny
〜神竜の牙〜A-22
「まだ何も見えないのかよ!」
アルフェンの町を出てから半日が過ぎた。
棟梁に、アルフェンから一番近い町を聞いたアルス達はそこに向かって数時間歩いていた。
棟梁の話では半日くらいで着くとのことだったが、既にその半日が過ぎていたので、フォルツはうんざりとしていた。
「もうすぐだ、我慢しろ。」
それをなだめるアルス。
「もうすぐもうすぐ。さっきからそればっかり。!
もーう限界だ!」
フォルツはその場に座り込む。
「まだ半日しか歩いてないじゃねえか!お前よくそんなんで今まで旅してこれたな?」
ヴェイルが呆れ顔をした。
「俺はインドア派なんだ!とにかく今日はここを一歩も動かないぞ」
「よしわかった。お前とはここでお別れだ。長い間世話になったな。」
アルスは真顔でその場を立ち去ろうとする。
「お、おいアルス。」
「そんな」
それを見てルナとヴェイルが戸惑う。
「いいから」
アルスは二人を引っ張っていく。
それからしばらく歩いたところで
「大丈夫だ、必ず来るから」
アルスは赤髪を掻きながら冷静な表情をする。
「待て、待てって、本気で置いてくなー!」
フォルツが焦りながら走って追い掛けてきた。
「ほらな」
「なるほど」
「お前ら本気で寂しかったぞ!」
「わがまま言うからだ。」
「あの、本当に大丈夫なんですか?」
フォルツの冗談混じりの駄々こねに、ふとルナが本気で心配した。
「ルナはやっぱり優しいなあ。
どっかの誰かとは大違いだ。
感動した!」
「お前のおもりに時間を割くほど暇じゃないんでな」
「お・も・り・だ・と テメー!
お前が10歳の時、寝ぼけて剣とスコップ間違えて持って来て、魔物と戦おうとして死にかけたことヴェイルとルナにばらすぞ!」
「もうばらしてるだろうが!!」
アルスがフォルツの頭を腕で締め付ける。
「あー!痛いごめんって、ごめーん」
アルスの腕を何度も叩くフォルツ。
「ふふふ。
あなた達は・・・仲がいいんですね」
それを見てルナが微笑みながら言った。
「そうそう、マブだよマブ。マブ達!だから離してーー!!」
「ガキの頃から一緒だからな。腐れ縁ってやつだ。」
アルスは照れを隠すように言う。
「そういやまだお前らが出会った時の話しとか聞いてなかったな」
「是非聞きたいです」
アルスとフォルツのことを興味深そうに聞くヴェイルとルナ。
「そんないいもんでもないけどな」
そしてアルスは渋々、二人に自分達のことを話し始めた。