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Cross Destiny
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Cross Destiny
〜神竜の牙〜A
-21

「乱雲より出よ雷神トール 汝の前に立つは罪深き者 その身裁きの雷へと姿を変え 目前の咎人を貫け!
トールエナジー!!」
フォルツは全力で逃げ出すダンに雷の聖位呪文を唱えた。
【聖位呪文 それは炎、氷、雷、風、光、回復呪文の最高位。
驚異的な威力を誇るその呪文には、莫大な魔力と詠唱(回復呪文を除く)が必要となる。】
ダンの上空が突如真っ暗になり
"ゴゴゴゴ"
という巨大な音を鳴らす。
「ヒイイイ!!」
次の瞬間。
とてつもなく巨大な一つの雷がダンに向かって落下する。
"ドーーンッ"
という物凄い音と共に、雷の衝撃で大地にクレーターができる。
そしてダンは跡形も無く消し飛んでいた。

すると聖位呪文を放った後、フォルツの体から吹き出る魔力は止まり、銀色の瞳も元の黒い瞳に戻っていた。
「うっ!」
立ったままふらつくフォルツ。
「おい大丈夫か?」
アルスはそれを心配して駆け寄った。
「あれ、っかしいな。
俺は聖位呪文四発まで撃てるはずなのに」
自分の体の異変にフォルツは少し戸惑うが、それほど気にもしていない様子だ。
(・・・フォルツ、お前気付いていないのか?
あれだけの魔力を放出させてたことを!?)
そしてフォルツに自分と同じ現象が起こったことでアルスの疑問、戸惑いは更に膨らむこととなった。

「おっ!帰ってきたぞー!!」
アルフェンの町に帰ってくる馬車を見て、アルス達の帰りを、一週間首を長くして待っていた棟梁が叫ぶ。
すると町中の人達が一斉に出迎えてくれた。
「おーす!ただいま。」
ヴェイルとフォルツは町民達に明るく挨拶する。
「おかえりなさい!!」
そこには満面の笑みで出迎えてくれたレイの姿があった。
「ただいま」
そしてそれを見て微笑んで返すルナの姿もあった。

その後、同伴したシーラ兵が興奮した様子でこれまでの経緯を話す。
再び賊が襲ってきたこと。
その数が予想以上だったこと。
しかしたった四人で五十人以上の賊を倒したこと。
無事に星石を輸送できたこと。

それを聞いて町中が歓喜した。


翌日 依頼も終え、約束通りの報酬も得たアルス達は次の町に向かうことにした。
「次からも気を抜くなよ」
「バイビー」
「じゃあな」
「さようなら」
それぞれが挨拶する。
そしてアルス達を見送る棟梁が快く送り出してくれた。
するとその時。
「待って!待ってよ!!」
レイが走ってきた。
「レイちゃん!」
ルナがそれに気付く。
「ありがとう」
レイは涙をこらえながら笑ってみせた。
「きっとパパも喜んでる」
そして涙を流しながら再び笑顔で言った。
「ああ、今のお前を見ればきっとな」
アルスがそう返すのを聞いてルナやフォルツ、ヴェイルも頷く。
「うん。
あと・・・・・お姉ちゃん達。きっとまた遊びにきてね。」
「うん。きっと」

「おい、俺達その他扱いだぜ」
ヴェイルがフォルツに耳打ちする。
「感動場面を台無しにするなよな!!」


「クスクスクス」
「ふふふふ」


そしてアルス達はアルフェンの町を後にした。


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