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ヴァンパイアプリンス
【ファンタジー 官能小説】

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ヴァンパイアプリンス4-2

最近宏樹に逢って話したのは、夏休み中。
逢いたくて
抱き締めたくて
抱き締められたくて
もっと傍にいたくて
近くに感じたくて
月下は走った。
「宏樹…」

結に言われた通り、自分でも自分が変わったと思っていた。
夏休み前は好きな人もいなかった自分に、まさか彼氏が出来るなんて…。しかも、今の月下には彼氏である宏樹は、なくてはならない存在となっているのだから…。

月下は色んな思いを胸一杯詰め込んで、生徒会室前に立った。
「(…よしっ!)」
月下は深く深呼吸をして、ドアへ手を伸ばした。
「…ん?」
月下は、教室の中から話し声がしている事に気が付いた。
「(…誰かいるんだ…じゃあ邪魔しちゃうかな?)」
月下は帰ろうと姿勢を変えると、中から甲高い笑い声が聞こえてきた。
「(女?!)」
月下は中にいるのは男の人だと思っていたが、明らかに女の声だ。
月下の不安は、嵐の前の空のようにどんよりと曇っていく。
「(誰?何で二人っきりなの?何話してるの?)」
月下の足は引き返す事も出来ず、棒になっていた。
―ガチャ
「あら?何かしら?」
月下が動けずにいると、ドアが開いて井上が出てきた。
月下は驚いて声が出ない。
「井上さん?誰かいるんですか?」
訪問者に気付いた宏樹は井上の後ろからちょこっと顔を出した。
「えぇ。女の子が。」
「月下!!」
宏樹は月下の姿を見つけると、嬉しそうに笑った。
月下はその笑顔に少しほっとし、宏樹に笑ってみせた。
「お邪魔かしら?じゃあ、あたしはこれで失礼するわ。」
「すいません…」
「いいのよ。じゃあね、水無月くん」
井上は月下に会釈をして、その場を離れた。

「入って!」
「うん」
宏樹は軽く周りを片付け、月下に椅子を用意した。
「コーヒーあるけど飲でしょ?」
宏樹は部屋の隅で、二つカップを用意し、インスタントコーヒーの蓋を開けた。
「…ッ!」
「わッ!!」
月下は宏樹の無防備な背中に抱きついた。
「月下?」
「…逢いたかった」
月下の声はか細く、震えているようだった。
「うん…俺もだよ?」
しかし、宏樹の耳にはしっかりと届いていた。
月下はまわす腕を少し強くする。
「…大丈夫だよ。ココにいるから。」
宏樹は、月下の手の上に優しく自分の手を重ねた。
「…うん…ずっと傍にいて…」
月下は静かに目を閉じた。
ずっと欲しかった宏樹の温もりを感じて…

「月下…」
「ん?」
「そろそろ…手、放してもらっていい?」
「あ…ゴメンッ」
月下は宏樹の迷惑になるまいと、ぱっと手を離した。
「(…あたしウザいかなぁ…)」
抱き締める腕を拒まれて、月下は少し傷ついた。
「(もっと触れたいのに…。宏樹は違うの?)」
月下の心がネガティブになって、俯き加減になっていると、急に目の前の体が動いた。
「よし!」
気合いの入った声音に驚き、月下は顔を上げる。
「ひゃッ!」
次の瞬間にはもう、月下は力強い宏樹の両腕に包まれていた。
宏樹は体の向きを変えて、月下を自分の胸に引き寄せる。
「ゴメンね、月下。腕を放してもらわないと俺が月下を抱き締められないんだ。」
宏樹は腕のなかの月下の頭に、自分の顎を乗せながら言った。
「もう…逢いたくて死にそうだった。」
「本当?」
「うん。ずっと…」
月下は宏樹の胸から、少し体を起こす。そして宏樹の頬にそっと手を伸ばした。
「疲れてない?無理しないで…」
宏樹は、頬に触れる月下の手に自分の手を被せた。
「大丈夫だよ。心配しないで。」
宏樹は月下に笑ってみせた。
「嘘。無理してる。宏樹、あたしの前では無理しないでよ。」
月下は真っすぐ宏樹を見る。
宏樹はため息をついた。
「まいったなぁ〜…やっぱり月下に嘘つけないや。」
宏樹は月下の肩に頭を乗せる。
「うん。すぐわかるもん。…寝てないんでしょう?」
「うん…眠い…」
「…寝る?ソファあるし。」
月下は三人掛けのソファを指さす。
「あ〜…でも誰か来たらヤバいし…」
宏樹はちょっとだけ頭を浮かし、また戻した。
「あたしがいるから。イイよ。寝て?」
「でも…」
「言う事聞いて!」
月下は宏樹の手を引いて、ソファに座らせる。


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