友情の方程式−あの日−-1
加藤が俺に応えてくれた。
その証拠に、加藤からキスしてくれた。
加藤は壁に背中をつける様に座り、脚を横に流した。
加藤の視界が俺でいっぱいになる様に、なって欲しいと願うかのように、俺は加藤の前に座った。
そして俺は追い討ちをかけるようにさらに、加藤の唇を求めた。
加藤も負けじと、こっちに来る。
二人しかいない部屋。
部屋の中には、少し汚れた机とイス。何かの資料。
広い道具箱のようだ。
そして、窓があった。
顔を離して、加藤を見る。
窓から入ってくる夕日が加藤の顔を照らす。
熱にうかされているかのように、赤く染まった頬。加藤はすぐ赤くなること気にしていたのを俺は知っている。夕日のせいで余計赤みが増して見える。
きれいに整えられた眉。描く必要がないぐらいの濃さだ。
少し細めで、二重の瞳。いつもは強気な象徴となっているその瞳が、今は潤んでいる。
少し小さな鼻。
加藤は気にしていたが、俺はそんなことないよと言ったことがある。
形の整った唇。普段は、リップで潤っているが、今潤っているのは、違う。この潤いは俺が加藤を求めた証だった。
俺の視線は耳に移った。
普通の人より、少し大きな耳。以前、加藤が『お金が貯まるかも』なんて言っていた。
夕日のせいで普段より明るく見え、軽くウェーブがかかっている髪。
似合ってるって言ったら、『でしょ?』と嬉しそうに言っていた加藤お気に入りのヘアースタイル。
さらに視線は下へ。
首筋には、シンプルにクロスのペンダント。彼氏に買ってもらったのってからかったら、『そんなのいないの分かってるのに』と、怒っていたっけ。
その少し下には、きれいな鎖骨のラインが見える。
時々、着る服によって見えるそのライン。元々、白く透き通るような肌をしている。そのため、加藤が熱を帯びているのが一目で分かる。
今まで、加藤は何回も。何十回も、見てきた。
なのに今日は、まるで初めて会ったような。
"女"に見える。
再び、俺は加藤にキスをする。片手で加藤の頭を支える。
加藤も応える。
加藤の両手は俺の胸の辺りの服をきゅっと握った。
俺の勢いはとどまることを知らないのか、もっと加藤を求め始めた。
その証拠に俺の舌は、加藤のものを求めた。
静かな放課後で、この部屋。
遠くの方で、グランドでしている部活の声が聞こえる。
でも、そんなの今の俺にはお構いなしだ。
部屋には、お互いを求め合う音だけが響いている。
お互い、話さず。
ただひたすら、求める。
何かに取り付かれたかのようにお互いが相手を離さない。
これが本能なのかもしれない。
何も考えず。
感じるままに。
相手を求める。
俺の唇は、加藤から離れた。
次の行き先は、耳だった。
耳朶を甘く、噛む。
加藤の口からは甘い吐息だけが聞こえる。
その声を聞く度に俺の体温は上がっていくようだった。
でも…何なのだろう。
加藤を求める一方で、俺の胸はちくり、と。する。
これは…
ナニ?