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友情の方程式
【学園物 恋愛小説】

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友情の方程式−あの日−-2

俺の口づけは首筋に移った。
大切に、ガラス細工を扱うかのように、丁寧に、慈しむようにキスをした。
キスをする度にある気持ちは満たされる。
でも…胸はチクリ、チクリと。
痛みが増す。

そして、鎖骨に口づけすると同時に、俺は加藤の服に手をかけた。
その時だ。
何故かしょっぱい味がした。
服にのばした手には一つ、また一つと水滴が落ちる。
『やめよう』
加藤が言った。加藤の瞳からいつの間にか涙が出ていた。
俺も泣いていた。
なんで?
なんで?俺は加藤が好きだってさっき自覚したのに…
『中山…これで分かったんじゃない?』
そう言った声はいつもの加藤だった。
さっきの甘い声はどこかにいってしまった。
『…っんでだよ?なんでそんなこと言うんだよ?何が分かったんだよ?俺はお前が…』
『中山は私を好きじゃないよ』
優しい、柔らかい口調でいう。
『いや…俺は…』
『ほんとは、別れた彼女が好きなんだよ。その証拠にほら…泣いてる。そして私も…北川が好きなの』
俺の頬を両手で包むようにして顔を持ち上げ、親指で涙を拭ってくれた。
『俺が…晶を?』
『そう。胸がチクリと、しない?』
そう言って立ち上がった。
あの胸の痛みは…晶を思う気持ち…?
『先、帰るね。ちゃんと自分の気持ちみつけて。…私は見つかったから。ありがとう中山』
そう言って加藤は部屋を出て行った。

行かないでくれ!
そんな言葉が喉から出そうになった。
でも、出なかった?
何故?
やっと…加藤を好きだって分かった。
あの涙は嬉しかったからだ。
なのに…

こんな部屋に、一人でいてもしかたない。
帰ろう。
そう思い、かばんを手に取る。
皆がよく持っているなんとかいうブランドのかばん。
黒で、生地はしっかりしていて丈夫なことで人気だ。
そのかばんのポケットからはクロスのボールペンが見えていた。
『かーくんは自分では絶対選ばないでしょ?スーツ着る時に、百円のボールペンなんてちょっとね…だから、これ。誕生日プレゼント』
そう言って、晶は箱に入ったこのボールペンをくれた。
バイト代で買ったんだよって笑ってた。

そのボールペンを握りしめた。
またしょっぱい味がした。
これがなによりの証拠だな。
分かったよ、加藤。
ありがとう。

『かー…お久しぶりです』
晶が俺の顔をびっくりしたように見る。
あれから俺は直接、晶のバイト先であるドーナツ屋に来た。
『話しがあるんだ。何時に終わる?』
急かすように聞く。
『もうすぐ…』
『じゃ表で待ってる』
それだけ言って店を出た。
何も買わずに出ていった俺を何人かは見ていたが、気にもせず前で待つことにした。


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