ヴァンパイアプリンス-2
「…誰ッ?!」
月下は背後に人の気配を感じ、振り向いた。…そこには消えたはずの青年がいた。一歩、一歩月下に近づいていく。
「ぁッあたし食べてもッおいしくないよッ?!」
月下は必死で自分を守る。吸血鬼は血を吸うものなのだが…。
「…ぁッ。」
青年…ぃゃ吸血鬼がとうとう月下の真前に来た。そして…
「んッ…?!」
吸血鬼は月下の唇を奪っていた。
「…ふッ…」
月下は吸血鬼を引き離そうとした。
しかし、月下の力では適うハズもない。
吸血鬼は月下の舌に自分の舌をからませる。
「…んんッ」
月下はビックリして、身を後ろに退いた。
しかし、吸血鬼は月下の腰をさらに強く引き寄せる。そして、吸血鬼は月下の首筋へ唇を下ろした。
「ぁッ!!」
(すッ…吸われるッ)
月下が強く目をつぶった。
「んッ…ぇ?」
(…痛くない…?)
吸血鬼が唇を離す。そして、微笑んでこう言った。
「…またいずれ…お嬢さんの生き血をいただきに参ります…。」
突風によって運ばれた雲が満月を隠していたが、いつの間にか取り払われていた。
「み…なづき…くん」
月が吸血鬼を照らし、月下は無意識に水無月の名前を呼んだ。
「…また…いずれッ」
吸血鬼はそう呟くと、月下の前から姿を消した。
「…水無月クンに…似てた…気がする…」
月下は唇を指でなぞった。水無月似の吸血鬼にキスをされた事を思い出し、顔を赤らめた。
「…ん?!あッ…」
しかし、月下は自分が一人でいる事に気付いた。月下は真っ青になり、全力で家路へと走る。
「怖いよぉ〜〜〜ッ!!一人にしないでぇ〜!!」
彼女の叫び声が、住宅街でいつまでも響いていた。
月下が峰島家に着く頃には、住宅街は静けさを取り戻しているだろう。
―次の日
「…ぁれ…?この辺のはずなんだケド…」
月下は水無月にハンカチを返すべく、水無月家を探していた。
「おかしぃなぁ…」
家を探す事1時間強。月下が家を出た頃は青空が広がっていたが、空は厚い雲に覆われ今にも雨が降りそうだった。
「う〜〜…」
月下が途方に暮れていると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「峰島サン?こんなトコで何してるの?」
「…水無月クン〜〜!!」
水無月だった。
「ハンカチを返そうと思って…家を探してたんだケド…迷った…」
「…そうなんだ。ってかウチの家と逆なんだけど…」
水無月が指した方向は月下と逆の方面だった。
「え…マジ?!」
「うん。マジ。…ハンカチは今貰うから、早く帰ったほうがイイね。もうすぐ雨が降るから。」
水無月は空を見上げそう言った。
「うん…でも…」
「ん?」
月下が恥ずかしそうに俯いた。
「…帰りの方向がわかんナイ…」
「ぇ…」
水無月が間抜けな声を出すと同時に、空がバケツをひっくり返したように泣きはじめた。
「うゎッ、降ってきた。峰島サン、走って!!」
「ぇっ?!」
水無月が月下の手をとり、走った。