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友情の方程式
【学園物 恋愛小説】

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友情の方程式6-2

加藤は教室から少し離れた棟にいた。そこのつきあたりにある部屋はあまり使われていないことから、人は寄り付かない。そんなとこで一人泣いていた。
『大丈夫か』
顔を上げる。いつもの強がっている顔が、今は悲しみでいっぱいだ。
『なか…やま…かぁ…ごめん。なんか恥ずかしいとこ見られたね』
服の袖で涙を拭う。その姿が何故か、俺の胸を締め付ける。
『いいよ、無理しなくて。泣きたかったら泣いたらいい』
『うん…』
俺は加藤の隣に座った。数センチ。俺と加藤の距離だ。こんな近くにいたことは何度かあるのに、今日は何かが違う。
『北川に…告白された。もう一回、やり直さないかって』
ぽつりぽつり話始めた。
『…うん』
『でね…どうしたらいいか分からなくなって…黙ってたの。そしたらね…』
服の裾を両手で掴む。かなり押さえているようだ。
『そしたら…?』
『フラれたんだって。向こうに別に好きな人が出来たらしい。…でも、私が未練があるって思ったのかなぁ…”俺、もう菜緒から離れたくない”だって。そんなこと言ったら戻ってくるとでも思ったのかなぁ〜自業自得だよね』
まさかねぇ、なんか言いながら笑う。
とても…痛々しい笑顔。そんな作り笑い見たくない。
『ホントは…ちょっとだけ嬉しかった。また私に笑いかけて、触れてくれるのかなぁって思った。でも…また次に好きな人が出来たら捨てられるだろうし。』
さっきは北川にきついことを言ったが…分かったんだ。今度こそ北川は本気だってことが。
『うん…で?どうするの?また付き合うの?あんなことされて?』
嫌みっぽく言う。…違う。こんなことを言いたいわけじゃない。いつもの俺ならもっと上手いことが言えるはずだ。なんかおかしいぞ、俺。
『なんでよ…そんな言い方するの?本当は分かってたんでしょ?私がまだ北川が気になっていたこと』
そうだ。あいつは気付いたら北川を見ていた。そんな姿を見てよくやるなって思っていた。
『…うん。知ってる。知ってるからこそ、お前があいつのとこに行こうとしてるのが嫌なんだよ!』
叫ぶような大きな声で言った。そして…気付いたら、俺は加藤を抱きしめていた。
『…え?ちょっ…』
耳元で加藤の声がする。かなり戸惑っているようだ。そりゃそうだ。こんなことしたのは初めてだ。
『…なんか分かんねーけど、急に抱きたくなった。』
ゆっくり腕の力を緩める。
加藤の顔を見る。…戸惑っているのが人目で分かった。
『…なっ何言ってんの?離して!』
『嫌だ。』
『もう私のことなら大丈夫だから!』
加藤が両手で俺を押そうとするが、俺は負けずに抱きしめた。
『嘘つけ。体、震えてんぞ。』
『そんなことない!おねが…』
加藤が黙った。…いや正確には黙らせた。俺が話せなくした。加藤の口が動かせないように、俺が口を重ねた。
こんなこと、今までに何回もした。なのに…初めてするような感覚に陥った。
たった数秒。その状態を続けた。頭の中がぼぉーっとしてくる。
『…何のつもり?』
俺から離れた加藤が言う。顔を更に赤くしていた。
『キスしたくなったから、した。それだけ』
『それだけ…って。何でそんなことするの?』
顔はまた泣きそうだ。
『今、一人になりたくないだろ?じゃ俺が恋人になってやる』
更に驚いたように加藤が俺を見る。
『…いい。一人で。』
『いい加減素直になれ。ホントは、俺といたいだろ?』
嘘だ。俺が加藤といたくてたまらない。俺は再び、加藤を抱きしめる。拒否はしない。
加藤が俺を見る。
目が合う。
寂しそう。
それでいて、すごく魅かれる。
こんなに弱ってる加藤を見たのは初めてだ。
いつでも強気で、真面目で、白黒はっきりしていて、"女"として見れないって思ってた。
でも、自分の目の前にいるのは紛れも無く"女"だ。
その"女"に俺は惚れている−
そう自覚したらもう止まらない。



加藤は返事の代わりに、自分の唇を俺に重ねた。
それがスイッチかのように、俺は体がより熱くなるのを覚えた−


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