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アッチでコッチでどっちのめぐみクン
【ファンタジー 官能小説】

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アッチでコッチでどっちのめぐみクン-16

第5話 『あっちの世界のめぐみクン』


「どういうことよっ!!」
 葵の怒声が花畑中に響きわたる。

「メグミ様はこちらの世界では女性、ということです」
「な!? どうしてよ!? どうしてめぐみクンだけ性転換させられちゃうのよ!」
「それは……ある者がメグミ様に、この世界では女性になるように術をかけたからです」
「……術!?」
「ええ、この世界には、あなたがたの世界で言うところの『魔法使い』と呼ばれる者が多数存在するのですよ」
 葵は唐突に出てきた魔法という言葉に眉をひそめる。
「……嘘でしょ!?」
「嘘ではございません。実際、あなた方は私の魔法によってこの世界に来ていただいたはずですが」
「じゃ、爺さんも魔法使いなのかよ!?」
 哲太の表情にも素直に信じてもいいのかどうかという迷いが表れている。
「ええ、そうです。とはいえ、私は大したレベルの術者ではないのです……メグミ様の御両親などとはとても比較できるものではございません」
 ジョセフの言葉に、三人が一斉に目を丸くする。

「え!?」
「めぐみクンの両親も魔法使いだっていうの!?」
「はい。それも英雄と称えられるほどの力をお持ちです」
「で、でも、ボクはお父さん達が魔法なんて使っているの見たことないよ!?」
「我々もあなたがたの世界では魔法を使えないのです。こちらの世界に繋がる出入口を作ることはできますが」
「……めぐみクンはどうなの? ここでは魔法を使えたりするの?」
 葵がジョセフに尋ねる。
「……術を使えるようになる素質自体はあるでしょう。なにしろ、あの御両親の血をひいているのですから。術を使える可能性があるかないかは血筋が一番重要なのです」
「俺達とかでも使える可能性はあるのか?」
 今度は哲太が期待に満ちた声で尋ねる。
「その可能性はほぼないでしょう。こちらの世界で生まれ育った者でも術者になれる者は極めて少ないのです。ましてや別の世界から来た者が術を使える可能性はほとんどないかと思われます」
「……それって、こっちの世界で育ったってわけじゃない
めぐみクンも結局術は使えないかもしれないってこと?」
「……断言こそできませんが、おそらくは」
「なんでぇ、つまんねぇ……こともないけどよ……」
 そう言って哲太は女の子になってしまっためぐみの方を振り返る。その視線に葵が素早く反応する。

「ちょっと、あんた。まさか、めぐみクンが女の子になって喜んでるんじゃないでしょうね!」
「……」
 哲太は視線をめぐみからも葵からもそらす。
「やっぱり! 言っとくけどね、めぐみクンのこの姿はあくまで魔法で変えられただけの仮の姿なんだからね!」
「……わかってるよ、そのぐらい」
「ホントにわかってるんでしょうね!?」
「……それで、ボクを女の子にする術をかけたのは誰?」
「あ、そうよ! どこの馬鹿よ、そんなことするのは!」
 めぐみの質問に、葵が同じ質問を怒りを込めて重ねる。
「メグミ様に術をかけたのは……おそらくサイファ・フーズィという者だということです。メグミ様を女性にした理由については不明です」
「不明ってなによ……まぁ、なんでもいいから、さっさとそいつに、かけた術を解くように言いなさいよ!」
「……ところが、このサイファという者は、十七年前メグミ様に術をかけた後、行方知れずになりまして……」
「……じゃあ、誰でもいいわ。めぐみクンを男に戻して。ここには魔法使いはたくさんいるんでしょ」
「ところがそうもいかないのです。かけた術者を遥かに凌ぐ力量を持った術者でないと、他人のかけた術を解くことはできないのです」
「……お父さんやお母さんでも無理なの?」
「ええ。おそらくサイファはこの世界でも最高レベルの術者だと思われます。ですからサイファを見つけて解かせるか、またはサイファが死んでしまわない限り、メグミ様はこちらでは女性のままということに……それで、今に至るまでメグミ様の御両親はメグミ様が本来の姿でいられるあちらの世界で暮らし、メグミ様をこちらには連れてこられなかったのです」
「それをあんたが連れてきたってぇの!?」
「すみません。王子が是非にと言うものですから」



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