友情の方程式5-1
『君、野球部に来ない?』
『サッカー部に是非!』
放課後を告げるチャイムかの様に、声を張り上げている部員。
あの夏から時は経ち、いつの間にか春を迎えていた。
俺は4年になったが、相変わらずの生活を送っている。
入学式を終え、まだ幼さを残す一年が部活の奪略戦に巻き込まれている。
もちろん加藤も応戦しているようだ。
加藤がいるテニス部には男はいるが女の子が極端に少ないという、工業の学校には有りがちの悩みを持っているらしい。
『テニス部はこちらです!一度見ていって…と思ったら中山くんだぁ〜ごめん!一年かと思ったぁ』
わざとらしく言う加藤。玄関でからまれた。
相変わらず口の減らないやつだ。
『いやいや…4年ですから』
調子よく答える。
『あ、そうだっけ?失礼』
全然反省の色は見えない。
『…まぁいいや。人来てるの?』
『うん、そこそこ。なんせ、うちには瀧谷がいるから。』
と、嬉しそうに話す。瀧谷とは2年で、結構カッコイイらしい。で、加藤とも仲がいいらしい。
『良かったじゃん。』
と、言った瞬間
『加藤先輩!』
噂をしたら、とやつだ。瀧谷という加藤の後輩が廊下を走って来た。
遠目からしか分からないが、なかなか整った顔はしている。背もそこそこあるみたいだ。
『じゃ、頑張って。』
と、加藤に背を向けてひらひらっと手を振った。
『うん!じゃぁね!』
後ろの方から加藤の声が聞こえた。
駅に向かってのんびり歩いている途中、ケータイのバイブが震えた。
ジーンズのポケットから取り出してみる。
折り畳み式でサブ画面付き。そこに”着信 晶”と表示。
今から会うのになんだろ…
『もしもし?』
『あ、かーくん?ちょっと話があって…』
妙に静かだ。いつもならもっと明るいのに…
『え?今から会うじゃん。そん時じゃだめ?』
『…うん。』
『なんで?』
『あのね…私、しばらくかーくんと会いたくないの…』
…え?どうゆう意味?
『…え?俺、なんか悪いことしたか?それならあやま…』
『違うの。このままじゃいけないって思うの、私たち。』
ぐすっと聞こえた。晶が…泣いている。
『…別れたいってことだよな』
『…』
長い沈黙。電話の向こうでは晶が泣いているようだ。
『…分かった。ごめんな。今まで。』
『…謝らないで。私こそ、ごめん。』
そう言って電話が切れた。
何が起きたのか分からない。俺は…距離をおきたいと言われて…で、別れて…
”今日会えなくなった”と言われたレベルと同じぐらいのショックだ。