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記憶のきみ
【青春 恋愛小説】

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記憶のきみ0.5-1

俺達の出会いは、高校の入学式だった。


入学式、門に掲示してあるクラス表で自分の名前を探す。
教室に入り、真新しい机につく。真新しい制服となかなかマッチして……はない。さすがに。


式の時間が迫り、ほぼ全員が教室に入った頃、前の席のヤツが話しかけてきた。
「俺、冬堂灰慈。よろしくな」
ケラケラと笑ったコイツが手を差し出してくる。
とりあえず握って自己紹介。こういうの苦手なんだが。挨拶されたならするしかない。
『……常葉瞬。よろしく…』
「なんや、えらいクールやな」
『……そういう人間なんだ。冬堂は関西人?』
不思議な言葉使いが気になった。
「やっぱわかる?最近まで一人で西日本ウロウロしててん。いろいろ混ざっちゃってさ。おかしいっしょ」
『……』
正直おかしかったが、口には出さなかった。
「そういや俺の前のヤツ、まだ来てないんよ」
会話が終了したかに思えたが、冬堂は続けた。
『……入学式からボイコットか。ヤンキーだったら面白いな』
「いやいや、めっさこえーよ。」
思えばこの日の俺は、いつもよりよくしゃべってた気がする。

担任となる教師が来て、簡単な挨拶を済ませた。
冬堂の前の生徒はまだこない。
やがて時間は過ぎ、入学式会場の体育館へと並んで向かおうとしたとき、ソイツはやってきた。
「すいません!間違って三年の教室で待ってました!!」
途端に失笑が起こる。
走ってきたソイツは随分と身長が高く、体格がよかった。見てすぐにスポーツマンだとわかる。
「ええ?全然ヤンキーじゃねぇ!むしろ正反対や!つか天然?」
冬堂はひどく驚いた。
ソイツは担任に早速叱られ、苦笑いしながら列にならんだ。
冬堂はさっそく俺と同じように挨拶をしていた。



入学式も終盤に差し掛かった。
この学校では、最後に入学生徒全員の名前を、担任が一人ずつ呼び、元気よく「はい」と返事をする伝統があった。

その伝統は俺のクラスに突入し、五十音順の前の方の生徒が「はい!」と気合いの入った返事をしている。
「樋青空」
「はいっ!」
さっきの遅刻くんは青空って名前なのか。変わってるな。
「冬堂灰慈」
「はい!」
コイツは結構かっこいいよな。性格もいいし、中学時代はモテていたんだろう。
「常葉瞬」
「……はい」
小さく言う。俺はこういうのはダメだ。
溜め息をつき、窓の外を見る。
散りゆく桜。
綺麗だと思った。



式は終わり、教室ではしばらく自由な時間がとられた。
周りが雑談をする中、俺はなんだか無性に桜が気に入って、窓の外を眺めていた。
『由貴は元気かな……』


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