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記憶のきみ
【青春 恋愛小説】

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記憶のきみ0.5-2

しばらくすると冬堂と樋が寄ってきた。
「なぁ、俺らって三人とも“と”で始まるんだよな。クラスに三人もいるって結構すごくね?」
いや、別に普通だと思う。同じ名字が三人ならともかく、“と”だけだろ。
「まぁ同じ“と”同士、三人仲良くしようぜ」
冬堂がケラケラと笑いながら言う。
「よろしく、常葉。まいねーむいず、樋青空です」
『………よろしく』
マジでコイツは天然らしい。
とてもウケを狙っているようには思えん。
それから三人でいろいろな話を始めた。
『冬堂ってあの冬堂総合病院の冬堂かよ…』
「そ。俺もいちおうは医者目指してんだけどねー。でも絶対に親の仕事は継がないつもり」
「なんで?」
「……なんかさ、つまんねぇじゃん」
『………』
このとき、俺は冬堂を器のデカい人間だと思った。
「俺はスポーツが好きだし、体育教師になりたいんだ」
『なるほどな。なんか部活やるのか?』
「いや…部活はしないつもり」
「なんでやねん。いい体格してんのに、もったいない」
「スポーツを一つに絞りたくないんだよ。スポーツは全部好きだから、全部やりたいんだ」
『……』
樋も負けずにすごいやつだ。俺はそう思った。
「そういや青空って名前、かわってんねんな。どういう理由なん?」
『……』
「なんか、すっごい清々しい青空の日に産まれたかららしいよ」
「……すげーな」
『……すげーよ』
「そういう冬堂だって、灰慈ってかわってるよ。もしかして、アルプスからきてるの?」
「ぶっ!ちげーよ!!」
俺は思っていたよりコイツらとの関係が楽しくなって、ふと思いついたことを口にした。
『……みんな呼びやすいし、名前で呼ぶことにするか』
「おっ!無口くんナイスアイデア」
『………うるせーよ灰慈』
「瞬はなんで無口?恥ずかしがり屋さん?」
「アッハッハ!かもな!青空、もっと言ってやれ!」
天然の青空に明るい灰慈。やっとコイツらのことがつかめてきた。
『………いいよ別に。あながち間違ってねぇから』
「アッハッハ!お前もかわってんな」
『………かもな』
「なんか俺達、仲良くやっていけそうだね」
「まったくだ!マジその通りだな」
『………ああ』



こうして俺達は出会い、仲を深めていった。

思えば、同じ“と”じゃなければこのようにはいかなかったのかもしれない。
それは大げさだが、俺はそう思いたい。
他にも、灰慈がバレンタインにチョコをクラスの女子全員に貰って教室が修羅場と化していたことや、青空が体育祭でヒーローになったこと、俺がバイトで稼いだ貯金で(成人を装って)パチンコに行ったのだが、あっさり使い込んでしまい、俺が一週間寝込んでしまったこと(クラスのアイドルが見舞いに来てくれて、二人に悔しがられていた)などいろいろな思い出がある。
だが、今回は三人の出会いを大切にするため、省略しよう。
まぁ結局言いたいことは、高校三年間コイツらと連んでよかった。



灰慈、青空、これからもよろしくな。


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