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記憶のきみ
【青春 恋愛小説】

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記憶のきみ2-2

『あれ?由貴?』
「え…瞬?」
二人はお互いの名前を呼んだ。
またも嫌な空気が流れた。
「どういうことなのかな?」
青空が灰慈に耳打ちする。
「わかんねー。」
一方、二人は盛り上がっている。
「瞬だよね!久しぶり!元気にしてた?」
『ああ……お前は?』
「うん!元気!相変わらずあまりしゃべらないんだねー!」
『お前こそ、気の強いとこは変わってない』
「はは」
いてもたってもいられず、灰慈が瞬に聞いた。
「なぁ瞬、どういうことだ?」
『ああ…こいつは佐藤由貴(さとうゆき)。俺の中学の親友みたいなもんだ』
「へぇー…って!お前が探してるのは明石悦乃だったろ?」
『あ…』
そうだ。なんで由貴が明石悦乃の定期券を?
「あ…あの…明石悦乃は私です。ありがとうございました」
今にも泣きそうな、いや、現在進行形で泣いている女の子が前に出てきた。
『ああ、きみが…』
「はい、困っていたんです。助かりました」
彼女は俺たちと駅員に頭を下げた。
駅員は、「よかったですね」と言い、笑顔で持ち場に戻っていった。
『……見つかってよかった』
「はい!」
彼女はあまりにも嬉しそうにはにかんだ。
「可愛いな」
「うん、なんか可憐だね」
再び灰慈と青空は後ろで耳打ちをしている。
「……瞬と悦乃、知り合いなの?」
由貴が二人に聞いた。
俺は悦乃の顔をよく見てみる。
『……いや』
知り合いではないようだ。昔の同級生でもない。
どうやら本当に初対面なようだ。しかし、なんだか気分は晴れない。
『悪い…知り合いじゃなかった』
いちおう一緒に探してもらったことだし、灰慈と青空に謝る。
「いーよ、俺らもすっきりしたし」
「うん。よかった」
定期も渡したし、これで終わりかと思ったそのとき、灰慈が伸びをして言った。
「さぁーて、お互いの親睦を深めるために、お茶でもしますかーっ!!」
「えっ?」
『……』
まさか灰慈くん、マジでついでにナンパですか?
本日、三度目の嫌な空気。
『冗談だから……』
俺は苦笑いしながら悦乃に言った。しかし、意外な答えが返ってきた。
「……いいですよ。皆さんは恩人ですし。」
『…………は?』
なぜかOKが出てしまった。
「悦乃、いいの?」
由貴が聞いたが、悦乃はニコニコして切り返す。
「だっていい人そうだし、お礼くらいしなきゃ…」
すると、今まで黙っていた女の子が元気に言った。
「はーい!葵は賛成!だってえっちゃんの命の恩人だもんねぇ〜!」
ひまわりのように明るい女の子だ。だけどちょっと言ってることがおかしくないか?
つい青空を横目で見てしまう俺。
「ん?瞬、なに?この子が言ってるとおり、命の恩人だろ?」
『……』
この葵という女の子、どうりで青空と同じオーラを感じると思った。

「由貴ちんは嫌なの?」
葵は明るく言った。
「んー、まぁ、悦乃がそう言うなら。瞬と久しぶりに会えたことだし!」
その言葉に、悦乃は再びはにかむ。
「じゃ…じゃあ、行きましょう」
「うっし!」
灰慈はガッツポーズを見せた。
なんてやつだ。
こうして六人はファミレスまでの道をぞろぞろと歩き始めた。


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