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『半透明の同居人』
【悲恋 恋愛小説】

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『半透明の同居人』-4

 「俺はこれから就活に行くから」
 「就活?何?あなたプー?」
彼女はテレビから顔を僕に向けて聞いた。
 「大学生だよ!」
 「ふうん」
 そうして、すぐにテレビに戻る。
 僕は朝食を食べ終えると顔を洗い、スーツに着替える。今日もある会社の面接があるのだ。
 「えっ。ちょっと、もう出かけるの?」
 「そうだよ。じゃあ、行って来るから。あちこち、ひっくり返すなよ」
 「何言ってんのよ!半径10メートルって言ったでしょ。私も行くことになるのよ」
 それを聞いて僕はうな垂れた。1日こいつといるのか・・・
 「そうだったな。出来るだけ離れて歩けよ」
 「そんなことして意味あんの?私の姿はあなた以外に見えないのよ」
 その言葉を聞いて改めて彼女が幽霊だと言うことを再認識させられた。
 僕は準備を終えるとアパートのドアを開けた。試験会場の会社までは地下鉄を2本乗り継いで約50分かかる。彼女はやはり他の人からは見えていないようである。でもたまに、子どもが明らかに彼女を見ていたり、彼女の方を見て犬が吠えたりしていた。
 「彼には私が見えているようね。小さい子どもや動物は第六感ってやつが強いから見えちゃう場合があるの。それもほんの一部の人間だけどね」
 
 地下鉄の駅に着くと僕は切符を買い始めた。彼女は隣で珍しいそうに券売機を観察している。切符を買うと、僕は自動改札を通った。彼女はその自動改札にも目を丸くしている。見るもの全てが新鮮なようだ。
 「結構憑かれている人っているのね」
 「見えるのか?」
 混んだ車内で彼女はぼそりと言った。
 「まあね。同業者ってヤツだから」
 「どれがそうなんだ」
 「あなたには見えないわよ。あなた、霊感0でしょう。」
彼女の目には少なくともこの車両の5人は憑かれている人がいるらしい。中には真面目そうなサラリーマンの姿があった。きっちり髪を七三わけにしている。彼女はそれをみて「意外ね」と言っていたが、僕にはそれの意外さがよくわからなかった。それだったら、僕がルイに取り憑かれていることだって意外な気がする。


 「何あの態度!!信じらんない!」
 面接会場の会社を出てからルイはプリプリしている。面接官の態度が気に入らなかったそうだ。
 「あんなの普通さ。圧迫面接って言うんだ。よくあることだよ。ああやって、絞り込んでるんだよ」
 「そうは言うけど・・・」
 それ以上は何も言わなくなったが、まだルイは納得をしてないようだった。
 「さて、これで就活全て終わり!!後は結果を待つだけです」
 「ねーねー。これからどうするの?」
 ルイが目を輝かせて僕にそう問いかけた。ように見えた。少なくとも、この世界にただならぬ興味がありそうな目をしていた。時間はまだ、昼12時だった。
 「とりあえず飯だな。飯。」
 僕はまず安価な牛丼チェーンへ向った。
 「そういえばルイは何も食べなくてもいいのか?」
 「おなかすかないし」
 「そっか、便利な体だな」
 おどけていったつもりだが、彼女に笑顔は無かった。
 「悪かったよ。ごめん」
 気を悪くさせたかなと思い謝った。幽霊に気を遣っているのがなんだかおかしかったけど、顔には出さないように心がけた。
 「本当は・・・食べるの大好きなんだけど・・・」
 うな垂れていたかと思うと急に僕の方へ顔を向けてきた。
 「ひどくない!?なんも食べることできないんだよ!!所詮は肉体なき存在よ!ああ、腹が立つ。」
 逆ギレ・・・最近の若者か。僕は、ルイは間違いなく幽霊であるが、その前に一人の女の子であることを改めて気がついた


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