投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

『半透明の同居人』
【悲恋 恋愛小説】

『半透明の同居人』の最初へ 『半透明の同居人』 4 『半透明の同居人』 6 『半透明の同居人』の最後へ

『半透明の同居人』-5

 僕とルイは、食事を終えると水族館に行くことになった。ルイが行きたいというからだ。本当は、すぐにアパートに帰って眠りたかったのだが、この騒がしい幽霊に何を言われるか判らないので行くことにした。
 イルカショーが観たいなど言うので、近場のビsルの最上階の水族館ではなく、郊外の水族館に行く羽目になった。8月のど真ん中。水族館は多くの家族連れやカップルで溢れていた。
 「わぁ。混んでるねえ」
 そうは言っているがルイは楽しそうだ。
 「夏休みだからな。」
 僕はチケットを買いに向った。
 「大人2枚」
 「?」
 窓口の奥のチケット売りの女性は怪訝な顔をしている。僕は気がついた。ルイは入れなくていいのか。彼女は幽霊僕以外には、例外を除いて見えないのだから。目の前にいるチケット売りの女性に霊能力がある可能性は宝くじが当たるより確率が少ないのだ。
 僕はチケットを買うと一人で水族館に入館した。少なくともまわりからはそう見える。僕はこの夏休みの全盛の時に一人で水族館に来ているのだ。完全に周りから浮いている。
 「ねぇ。さっきから何で黙ってるの?」
 僕がルイに話しかけずにいるとたまらずルイが聞いてきた。
 「ルイは他人から見えない。僕がぺらぺらしゃべってると一人でしゃべってる危ないヤツだと思われるだろ」
 僕は出来るだけ小声で言った。 
 「ふうん。」
 ルイはつまらなそうな顔を見せたがすぐ笑顔を取り戻すと一人水槽にかじりついては、はしゃいでいた。特に、イルカショーの時はひどかった。まるで、子どものように彼女ははしゃいでいたのだ。観客参加の時に見えないのに手を挙げて、当たるはずがないのに、「ちぇ」と拗ねてみたりルイは僕が知っているような、怖い幽霊とはかけ離れているのだ。他の人に見えなかったり、ものをすり抜けたりしなかったら、普通の女の子だった。
 最も、僕が普通に情報として入ってくる怖い暗い幽霊は稀な存在であるそうだ。負の力が強すぎる幽霊は見えやすいそうだ。だから、見えやすい幽霊が取り上げられることらしい。ルイのような幽霊を取り上げても面白くはないだろうが・・・。
 結局この日、ルイは水族館に閉館の時間までおり、僕は奇異の目を閉館時間まで浴びせられることになったのだ。水族館の帰りに僕はそのことを漏らすと、彼女は「だれもあなたのこと見てないって。そんなに」と言うだけだった。
 僕は自分のアパートに戻ると異変に気がついた。誰もいないはずの部屋に電気がついてたのだ
 「あら、また同業者かな?」
 ルイはおどけているが、僕はもう一人に憑かれるなんてごめんだった。でも、僕にはその電気をつけた犯人がわかっている。
 僕がアパートにドアを開けると中からいい匂いが漂ってきた。カレーの匂いだ。そして、奥の6畳間から人が出てきた。
 「おかえり。おそかったね」
 「リカ・・・来てたのか」
 佐藤リカは僕の恋人だ。大学に入ってからだから、約4年の付き合いになる。リカにはこのアパートの合鍵を渡してある。
 「彼女?」
 ルイがこの状況で聞いてくる。僕はルイのことを無視した。
 「カレー作ってくれたの?」
 「そう。今日、就活最終日お祝いってことで」
 僕はカレーが好物だ。だからこうやって、誕生日やらクリスマスがあるとリカが必ずと言っていいほどカレーを作ってくれたのだ。
 「とりあえず、僕はシャワーを浴びるよ」
 「わかった」
 僕はネクタイをはずすとタオルをとり、シャワーを浴び始めた。
 15分くらい入っていたろうか。僕がシャワーからでると白いテーブルの上には既に夕飯の準備が出来ていた。
 「準備しといたよ」
 振り向いておそらくは笑顔のリカはそういった。おそらくと言うのは、ルイがリカにくっつきそうなくらいの距離で彼女の顔をのぞきこんでいるのだ。


『半透明の同居人』の最初へ 『半透明の同居人』 4 『半透明の同居人』 6 『半透明の同居人』の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前