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『半透明の同居人』
【悲恋 恋愛小説】

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『半透明の同居人』-14

 「わかった。それでも、一つだけ言わせてくれ・・・」
 僕はまっすぐルイを見つめた。ルイも僕をまっすぐ見つめ返している。
 「僕はルイが好きだよ。・・・今でも」
 「バカ・・・でも、ありがとう」
 ルイは涙を流した。僕も泣いていたんだろう。そして、僕はルイの体を抱き締めた。やはり、ルイの体はそこ何も存在しないかのように、体温も、感触も何もなかった。でも、ルイの涙で僕の胸を微かに湿らした気がしたんだ。
 ルイに好きだと言ったのはこれが最初で最後だった。
 僕の初恋はここで終わったのだ。

 その後、僕は実家を離れ職場に戻った。僕とリカは新居を見つけ、そこに住み始めた。式の日取りも決めた。式と同時に籍を入れる予定でいたのだ。僕とリカは、どのような披露宴しようかなどと、話し合っていた。ルイもリカがいないときに部屋来ては、披露宴のことに口挟んできた。お色直しは何回以上だとか、両親へのプレゼントはどれがいいとか、フラワーシャワーは絶対だとか、終いには、花火が上げようとか言い出した。そんなことを語る彼女の表情はとても嬉しそうだった。
 彼女は僕の呪縛から解き放たれたように見えた。
 そうして、リカと僕とルイとで計画は順調に進み、式の日が刻一刻と近づいて行くのだった。
  結婚前夜。この日は、リカは実家に戻っていた。この方が、明日の式が新鮮な気持ちで迎えることが出来るとリカが言っていた。そして、ルイは僕の部屋に来ていた。明日の式を喜んで切るようで、ずっと笑顔だった。
 「いよいよ明日だね?もしかして、緊張してる?新郎が緊張しているとかっこわるぞ」
 ルイはそう言っておどけて見せた。
 「う・・・少しね。でも、本当にいよいよだな。ルイにも色々手伝ってもらって感謝しているよ。明日の式には来てくれるよな?」
 「もちろんよ!」
 そうして、ルイは満面の笑みを見せると胸の前でぐっと親指を立てた。その夜、眠るまで、ルイと昔話や披露宴のことで盛り上がった。
 
 僕とルイが会うのはこの夜が最後だった。

 結婚式当日。式と披露宴は午後に行なうことにしてある。午前中に籍を入れておきたかったからだ。式には親戚をはじめ、たくさんの友人の姿もあった。もちろん、僕たちが招待したのだが。そこには、シンヤの姿もある。みんな、口々におめでとうと言ってくれた。素直に嬉しかった。式はチャペルで挙げた。ルイにあれほどかっこわるいと言われたのだが、僕は緊張しっぱなしで、式中は全く余裕はなかった。それでも、披露宴になると、新郎新婦入場から、高砂に着くまでの間、出席者の顔見る余裕が出てきた。入場の途中にシンヤやシュンスケが野次を飛ばすのも聞こえた。高砂についてあたりを見回す。出席者の100名弱が僕ら2人に注目していた。
 (あれ?)
 会場にはルイの姿はなかった。きっと、見えないようにしているのだろうと勝手に解釈したが、実際そんなことがルイにできるのかはわからなかった。
 披露宴は順調、友人祝辞にプログラムまで進んだ。新郎友人代表はシンヤに頼んである。シュンスケはもうかなり飲んでいるようだが、シンヤはこのためにまだ一滴もアルコールを飲んでいないようだ。
 シンヤが呼ばれて、少々緊張の面持ちでマイクに向う。
 「リクそしてリカさん、結婚おめでとう!そして、ご家族とご親戚の皆さん、本日はまことにおめでとうございます」
 シンヤはまるで前日にマニュアルに目に通したようにきっちりしていて、おかしかった。


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