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ミライサイセイ
【悲恋 恋愛小説】

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ミライサイセイ final act 「未来、彩、say」-4

「死は、終わりじゃない」
そうだろ、兄さん。
僕は天を仰いだ。
模様の無い天井が、無感情に僕らを見つめている。けれどそれも、何がしかの感慨を抱いているに違いない。
肉体が無くなって、全てが無くなるわけじゃない。
ゼロにはならないんだ。
それは、確かにどこかで生き続ける。
例えば、僕のなかに。
僕の進む道のなかに。
触れてきたもの全てが、自身の形となり、未来への磁針となる。
「あやは、僕の進む道を、永遠に彩っていくんだ」
あぁ。
あやは、顔をあげて、僕を見た。涙で埋め尽くされた瞳は、けれど確かに、生涯添うべき相手を見据えている。観念したように、あやは僕に近寄り、腰に手をまわす。
「あきら。わたし、幸せって、どこからやってくるのかなって、ずっと考えてた。だってこの世界に、ゼロは無いんでしょ?だったら幸せは、どこかに転がっているはずだって」
―――― お前には、さ。あるんだよ。そういうチカラが
からだの内から、発せられる声は、だから誰かの生の証。
死して尚、消えぬモノ。
それが答えだ。
「あきらは、幸せを運ぶ鳥だね」
飛べるだろうか。
そらは高すぎる。
世界は広すぎる。
けれど愛する人たちの為なら、きっと誰だって飛べる。
彩は涙しながら、笑う。
大地は、死者には追いつけない、と言った。
だけど、彼は跳ぶことを止めないだろう。それは人を繋ぐ架け橋。
ミクは、僕を飛ばせるために、その手を離した。
彼女は、僕を想い続けるだろう。やがて、僕と繋いだ手の感触を、笑って思い出せるように。過去の再生が、どうか彼女の未来を形作っていくことを。

僕は、ちからいっぱいに、彩を抱きしめた。
もう離さないように。
いつか肉体が消えても。
こころを、決して離さないように。
遥か、遥か、遠い道のさき。
例えば奇跡の果てに。
未来、彩が言う。「顔が皺くちゃになるまで、一緒に歩こう」
そんな願いを、雲の上にいる何かに向けた。
僕に、そういうチカラがあるのなら。
そんな無茶苦茶な願いを、心の底から抱く。
天才が世に残した凡才は、その一点にのみ秀でているのなら、これくらいの望みは叶ったって良いじゃないか、と。

抱きしめあう二人を照らす、不完全な月は確かに沈む。
そして明日が来て、季節が変わり、年が明ける。
繰り返される日常のなか、いつか、この温もりを失ってしまう時が来るのだろう。
それまでは、彩が笑えるように。
それ以降も、僕が笑えるように。
今を二人で生きていこう。
良いだろう?
兄さん。
僕は自分を許そうと思う。
どうか、あなたが生かした未来が、輝きに満ちているように。


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