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ミライサイセイ
【悲恋 恋愛小説】

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ミライサイセイ final act 「未来、彩、say」-3

「そう聞いたんだけど?」
「それは三年前の話でしょう?」
「だから三年前のことさ」
「あぁ、そうね。あの時は・・」
「それでも、僕は、あやが好きだ」
――― え?
時が止まる。
時が遡る。
――― 『あなたといた時間は、とても幸せだった。信じて。それだけは確かだから。』
別れの言葉が蘇る。
信じるよ。
信じる。
だけど、どうしてそんなに悲しそうな顔をするの?
「あやは、最後、幸せだったと言った」
あやは無言で頷く。
「その幸せを手放したのは、どうして?」
「それは・・・それは・・」
彼女が、その先を言うことは出来ない。言えば、この三年間が失われてしまう。
それは、僕のためだろう?
僕の未来のため。
でもそれじゃ駄目なんだ。
僕は君が好きだから。
ずっとずっと、君が好きだから。
「僕は、あやが好きなんだ」
「何を言ってるの?」声が震えている。
「一緒にいたい」
不意の事にあやは対応できず、瞳が泳ぐ。
「無理、無理なの。校門で言ったでしょ。もう無理なのよ」
「無理じゃない。僕らは、きっとやっていける」
「無理なの!!」
悲痛な叫びだった。
「もう、終わったことなの」
一転、低い声を捻り出す。その消えそうな語調は、いつかの彼女の姿を誘起させる。

――― 終わりって何だ?

その答えを、僕は探し続けたんだ。
兄を失ってからの日々を、全て費やして。
それを、必死で探し続けてきたんだ。
僕を庇った、あの日。
兄さんの人生は、終わってしまったのだろうか。
もう、何度も何度も何度も何度も。
自問して
自答して
自嘲して
自損して
僕は、ここにいる。
「あや、病気なんだって?」
告げると、あやは顔を上げずに肩を揺らす。嗚咽が聞こえる。張り詰めていた何かが切れる。沈黙してきた三年間を、壊す。
「あきらとは、一緒にいれないの。あなたの未来は、ずっとずっと先まで広がっているから、私に縛り付けておくことは出来ない」
ねぇ、分かってよ?
そらは暮れ逝く、哀しみの彩色。
青春を謳歌した、この場所で。
再度、愛する人を、自ら切り離そうとするその姿は、痛々しくも美しい夕べ。
震える両肩に手を置く。悲しくて震えているのではない。彼女は、寒くて震えているのだ。
孤独、という闇のなかで。
「本当は、三年前、あの校門で答えるべきだった」僕は言う。
「僕の心は、僕が消えて亡くなるまで、あやと共に在る」
まだ、彼女の震えは止まらない。だから続ける。
「未来永劫、君を愛し続けるよ、あや。僕を彩るのは、君の役目じゃないか」
だめよ、だめ、だめ、だめ。
壊れたレコードのように同じ言葉を再生する。首を横に振りながら。
「いま、ここに立っている事自体が奇跡だって。医者は言っているの」あやは、それが重大な罪であるように、言う。


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