銀の羊の数え歌−18−-2
「俺のなんか、もう何年も前にゴミに捨てられたか、もしくは小屋のずっと奥に入ってて一生日の目を見ない場所にいるよ」
そっか、そうだよな、と渋々スツールに腰をおろす。でも、その時にはすでに、残念に思う一方で僕は心に決めていた。
銀の羊の数え歌の絵本を、絶対に手に入れよう。そして、クリスマスにはそれを柊由良へプレゼントするんだ、と。きっと彼女は喜々として受けとってくれるはずだ。
とにかく僕は、彼女の笑顔を見れたらそれでよかった。
けれどいざ本屋巡りを始めてみると、状況は思っていたよりも難航した。
本が古いためか、それとも単純にそれ自体に人気がなかったのか、とにかくどの店にも置いていなかったのだ。もちろん、注文も試みた。だが、店員の話では在庫が残っているかも分からないし、もし仮にあったとしても、僕の手元に届くのに一カ月以上はかかるだろうとのことだった。
僕が今もこうして、檻の中のハツカネズミみたいに店内をうろつき回っているのには、つまりそういった理由があってのことだった。 仕事をして、柊由良に会いにいって、その後は時間の許す限り本屋のハシゴ。しかもクリスマスまで、あと三週間もないときてる。 これで焦らないと言ったら嘘になる。
客が最後の一人になるまで店内のすみずみまで視線を巡らせ回って、閉店の音楽が鳴りだした頃に無駄だと分かっていながらも一応、店員にもきいてみたら、やっぱり無駄だった。 締め出されるように渋々と店を出る。
外はさっまよりもさらに冷え込んでいて、空気は輪郭がはっきり見えるみたいに澄んでいた。
吐き出す息は真っ白に変わり、頬や手首から先が寒さで一気にこわばった。
背中の方で明かりが一つずつ消されていく。 沈黙と闇が、そっと降りてきた。
天を仰ぎ見る。
その先には、冬の星座がプラチナのような眩しい輝きを放っていた。