処女の値段-3
ベッドの中でアレコレ悩む鈴香。そして唐突につい数時間前に聞いた夜雲の言葉が頭の中に浮かんできた。
「ちなみに参加報酬はオークションで着いた値段そのままの金額。だから人気のある子ほどたくさん貰える事になるわね。鈴香ちゃんなら100万はいくかもしれないわね」
鈴香はソッと加奈の寝顔を覗き見た。スゥスゥと眠っている。先ほどまでとは違って穏やかな表情だ。そのまま見つめていると不意に、「お姉ちゃん」と今にも消えそうな声で寝言を口にした。
姉は最愛の妹を抱きしめながら覚悟を決めた。
それから2週間後、8月の月末。
リトルエンジェルの第2部が終了した。美少女達のあられもない行為に満足した観客達がゾロゾロと席を立ち帰路に着く。だが一部の観客だけは席を立つ素振りもせずそのまま席に座ったままであった。
やがて退出する最後の観客が姿を消すと、オーナーの関口夜雲がステージ上に姿を現した。紫色のドレスに身を包んだ彼女の手にはマイクが握られている。
「皆様。大変お待たせいたしました。これより第3部へと移らせていただきます。それではこちらへどうぞ」
夜雲が指をパチンと鳴らす。するとステージの一部がゴゴゴゴッと音を立てて観音開きのようにパカっと開き始めた。その中にはさらに地下へ続く階段があった。
夜雲が階段を降りるとそれに続く様に残っていた観客達が立ち上がりぞろぞろと地下へと降りて行く。人数は10人ほどであろうか。身なりの整った男がほとんどの中、1人だけ派手なドレスを着た女性もいる。
「久しぶりの第3部ですな、オーナー。速水嬢の破瓜が見れるなんて長生きした甲斐がありましたわい」
夜雲のすぐ後ろを降りていた初老の男が話しかけてきた。先日古希を迎えたばかりのこの男は、政財界の重鎮で夜雲とも付き合いは長く、またリトルエンジェルの上顧客の1人でもあった。
「ええ、必ず満足していただけると思いますよ」
後ろを振り返る事なくそう答える夜雲の表情はどこか曇ったままである。