今夜も-5
なんてさすがに桃江さんは百戦錬磨のお母さんだけあって何とか誤魔化して、おまけにこれからも泊まらせると言って布石を打っていました。僕達ではなかなかこうはいかないなあ〜なんて感心してしまいました。
「貢君、また息子の所へ泊りで遊びに来てやって頂戴ね。じゃあ、失礼いたします。」と桃江さんは待たせてあったタクシーに乗ってさっさと帰って行きました。
家の中に入ってからママはソファーに腰かけ、「貢、あんた向こう様に迷惑はかけていないでしょうね。急に泊まるなんて私びっくりしちゃった。」 「あ、うん、大丈夫だったよ。向こうのお母さんも言っていただろう?喜んでくれていたよ。」 「だって、私、寂しかったのよ、貢。」と僕に抱き着きキスをして、「もう、急に泊まったりしないでね、ママ、ママ、本当に寂しかったんだから、ね、貢。」と僕に抱き着いて放してくれません。「ねえ、ママのこと嫌いになったの?」 「ど、どうして?」 「だって、今まで外泊なんてしたことがなかったのに急に外泊するんだもの、もうママのことなんかどうでもいいのかと思っちゃって。」 「ば、馬鹿なことを、僕はママを一番愛しているんだよ。」 「本当に?じゃあ、これからそれを証明してくれる?」 「え〜!今から?ママ、仕事は?僕だって講義があるし。」 「あ、そう、私より仕事や講義が大切なのね、分かったわ。貢の考えが。」 「そ、そんなあ、ママ、本気?」 「嘘に決まっているじゃん、馬鹿ね、さ、仕事に行くわ。遅れちゃうわ。あんたも大学でしょう、早くしなさい。」 「はあ?ママ!息子をおもちゃにする?まあいいや今夜を楽しみにしているよ。」 「何よ、楽しみって。今日はバイトは行かないの?」 「うん、時給がいいからね、週に二日くらいでいいんだ。」 「ふ〜ん、ま、ゆっくりした方が良いよ、それに学生なんだから勉強もしっかりしてよ。」 「はい、分かってます。」
ママは仕事に、その後僕は大学へ行きました。