果てる果てる果てる-1
「そ、そんなことをされたのでは、わ、私は、すみません。奥様、どうか、ご勘弁を、どうか、お許しください」
彼の口調も、また、一段と、芝居がかってきた。三人が三人ともに、自分でないものになっているのである。自分でないものになって、それが本来の自分にもっとも近いものとなっているのだ。それは不思議な気分だった。そして、それは人を狂わせるのには十分なものだった。
彼は「うっ」と、声を漏らした、まさに、その瞬間に、妻は、彼のモノを私の口に納めてしまった。口の中で、それは、ピクンピクンと痙攣したかと思うと、ほんの少し膨張し、そして、熱いものをぶちまけた。私は驚いた。自分のそれが射精の瞬間に、これほどまでにダイナミックに変化しているということに、私は気づいていたなかったからだ。そして、男のそれの量がこんなにも多いものだとも思っていなかった。飲み込むことが出来なかった。喉が何かを拒絶し、それを吐き出そうとするのだ。まるで、冷蔵庫の中にあった腐ったミルクをそれと知らずに飲み込んだ時のような状態になった。
面白がって私の頭を妻は押さえたが、所詮は妻の力、私はそれを押しのけ、そして、彼には悪いが、彼のことも軽くだが突き飛ばすようにして、それを口から外し、自分の手の中に、それを吐き出してしまった。
「ダメね。女はいつだって、それを飲み込んでいるのよ」
そう言われて、何だか私は情けない気持ちになった。確かに妻の言う通りだったからだ。私も、過去に、何人もの女たちにそれを飲ませていたのだ。
「私が悪いんです。旦那様は悪くありません。我慢出来なかった、この私が悪いんです。すみません、すみません」
演技が乗っているのだろうが、自分よりも年長と思われる男に旦那様と呼ばれるのは、どこか、くすぐったいような気がした。私は、どういうわけか、彼の射精によって醒めていた。いや、醒めていた、と、そう思っていたのだった。しかし、違っていた。
「気にすることないのよ。飲み込むことは出来なかったかもしれないけど、彼は、あんなに興奮しているんだから」
妻に言われて、私は自分のそれを自分の目で確認してしまった。そうしなければ、気づかなかったのだ、自分が、まだ、興奮したままの状態にあるということに。
「本当なら、今度は、この人にアナタのそれを飲ませたいんだけど、でも、それをしてしまったら、私の分がなくなってしまうから、残念だけど、アナタのものは、私に、さあ、その熱くなったのを入れて、私の中に」
妻は、まだ、芝居の中にある。三人の中で私だけが醒めていたのだが、しかし、私の肉体は醒めてはいなかったようなのだ。私は妻に覆いかぶさった。クールに時間をかけて愛撫し、じっくりと女を攻める、それこそが男なのだ、と、そう言ったことがあったような気がしたが、この時の私は違っていた。ただの若者、いや、ただの獣のように妻の中にそれを納め、そして、腰を前後させた。
スローなセックスを好む妻を無視して、激しく腰を動かした。冷静になっていたはずなのに、それが妻の中に入ると、私は、そこで我を忘れてしまったのだ。
「アナタ、見て、この人」
見ると、妻の横で立膝のまま座っていた男のそれが再び興奮しているのが分かった。妻はそれを愛おしそうに、自分の口に導いた。
見知らぬ男のそれを愛情たっぷりに咥えている妻を見ながら私は果てた。ほんの数分のことだった。もしかしたら、インサートから果てるまでの時間より、精を放出している時間のほうが長かったかもしれない、と、そう思うほどの射精になった。
「すごい、こんなの久しぶりだわ」
「終わりじゃないよ。だって、そこに、まだ、使えるバイブがあるんだからね。どうやら、電池も切れていないバイブレータのようだからね。このまま、私のもので汚れた君の中をそれで掻き回せそうだよ」
「そ、そんなこと」
私は男と入れ替わった。男は言葉とは反対に、躊躇なく妻の中に入って行った。