フェミニンマインド、大飛躍-2
20時でも常識的に考えても得意先やソーイング工場に電話をすると言うのは迷惑な事だ。だがそれを申し訳なく思いながらも何とか仕事を引き受けてくれるところを探さないとならない状況だ。中にはこんな時間にと怒る相手もいた。社員らは何を言われても低身低頭でお願いをした。だが良心的な所でもスケジュール的に空きがないと断られてしまう。
「あー、どうしよう…。全然見つからない…。夕梨花ちゃんの方は?」
「全然ダメです。」
「私もです。」
「私も…」
「彰くんは?」
「俺の方もダメです。」
時間は20時半。もう流石にこれ以上は迷惑行為になると思い電話を掛ける事をストップした。
「明日、またお願いしてみましょ。今日はみんな疲れたでしょ?もう上がっていいわよ?」
都姫こそ疲れ切った顔で言った。
「でも…」
「今日このまま仕事をしてもきっと何も進展ないだろうから、もう帰ろ?私も帰るから。」
本当は自分だけ残って対策を練るつもりだったが、自分が帰らないときっとみんな帰らないだろうと判断した都姫はみんなと一緒に帰る事にした。
「鉄平くん、帰って来ないですね。」
夕梨花が心配そうな顔で言った。
「ちょっと電話してみる。」
都姫はCEO室に入り鉄平に電話をかけた。出ないかな…、そう思ったが5コール程で出た。
「あ、神谷くん…?」
心配そうな顔をしながらそう言った。が、電話の向こうの鉄平の様子が少しおかしい事に気付いた。
「はい、ハァハァ、ハァハァ、どうかしましたか?」
「(そんなに息を切らして走り回ってるのかしら…)今どこ?」
夜道を走り、必死で仕事を受けてくれるところを探してくれてるのかなと思った。が、何か違う雰囲気を感じた。
「今ですか…?ハァハァ、ちょっと取り込み中で…」
「取り込み中…?」
不審に思った都姫は耳をスマホにピタリとつける。すると何やら変な声が聞こえた。それは出そうな声を必死で我慢するような声を…。
「んっ…、んっ…、んっ…、ぁぁっん…」
都姫は眉を顰めた。するとついつい声が出てしまう女の声が聞こえた。
「んっ…、んっ…ああん!」
「!?」
すると慌てたような鉄平の声が聞こえた。
「しっ!言ったろ!?声だしちゃダメだって!」
「ハァハァ、だってぇ…」
「しっ!!」
都姫の顔が無の表情に変わる。
(…心配した私が馬鹿だった…)
鉄平は完全にヤッている最中だった。
「すみません、今ダメなんで…」
「いーえ、じゃあもうみんな帰るから、神谷くんもほどほどにして帰るようにね。じゃっ。」
そう言って通話を切った。
(こんな時にセックスって何なの!?信じらんない!)
さすがに頭に来た。都姫は深呼吸してからみんなの前へ戻り、
「神谷くんは直帰するみたいだから、私たちも帰りましょ?」
そう言ってみんなと一緒に会社を出た都姫であった。